[ハイキュー]弱くて強いやつ[男主] (ページ11)

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その十一、1歩ページ11

僕のことはこの6人の秘密
監督も知っているけれど、口止めをしている
言う必要もないと思うし、迷惑をかけたくない

放課後は決まって若利の部屋に行った
目の前に置かれたバレーボール
大丈夫、持つだけ触るだけ…

何日この思いを繰り返したかわからない
今日だって触れようと伸ばした手が震えている

『ごめん……』

「気にすんなって！」

瀬見くんは僕の頭に手を置いて雑に撫でた

「でもなー、触らないともうすぐ体育でもあるだろ、バレー…」

そう、それが待っている
最悪、プレーが出来なくても触ることさえ出来れば下手なフリして何とか誤魔化せる

「中学の時はどうしてたんだ？」

『怪我を理由に体育自体ずっと休んでた…おかげで成績はひどかったけど』

大平くんがあははと笑い、何か思いついたように手を叩いた

「1人で触るんじゃなくて、2人で触ってみたらどうだ？」

「いや、獅音まるで犬にでも触るかのように言うな…」

「物は試しだ、A手を貸せ」

大平くんの提案を聞き、若利が僕の手を掴んだ
そしてそのままゆっくりボールに近づいた

『っ…』

一瞬、本当に一瞬だけど確かに体が拒否反応を示した。けど、若利がそれに気づいて握る力を強めた。

「あ……」

天童くんが声を出した
そう触れたのだ

ボールに触れる僕の手、その手を上から包んだ若利の手。忘れていたボールの感触

『ははは……』

今まで怯えていた自分に、呆れたような笑いがこぼれた