検索窓
今日:11 hit、昨日:18 hit、合計:202,247 hit

ページ27

広津のあの言葉は、恐らく彼も含まれていたのだろう。
"喫茶店の店員にしては拳銃を扱う手をし、隙がまるで無い彼"の事も。






「先程話されていたのは、どちら様ですか?」







安室は優しい笑みを浮かべながらも、尋問官のような鋭さを孕んだ目でこちらを見つめた。
恐らく彼は疑っているのだろう、広津の事、そしてマフィアとの関係の事も。






『となると、彼は違法組織の人間か?
いや、仮にそうだとしたらマフィア側が動かないわけ無い』







ならば記者かなにかか?
いや、だとしたら拳銃など使わないだろう。








「小泉Aさん」








安室は逃げないように進行方向に手をつき、Aを追い詰めていた。
仮に逃げたとしても、直ぐに追いつけるように距離もはかっていた。







「彼の方と、お知り合いのようですね」








ここで返答を間違えるわけにはいかない。
深呼吸をし、脳裏に"あの人"を浮かべる。







「あぁ、あの方ですね。
良い人ですよ、私が以前に道に迷っていたら助けてくださった方で」







勿論そんなものは嘘だ。
安室は望んだ回答では無いことに一瞬苦い顔をした。







「…本当に、あの男とはそんな関係ですか?」








『あ』







安室は恐らく広津の職を知っている。
今この瞬間全てを理解した、その上で。







「はい、そうですよ?」









"太宰のような笑み"を浮かべ、Aはそう答えた。
思惑など感じさせない、天使のように美しい笑み。
だがその裏には悪魔の思惑が隠れている。







「…そうですか、良かった。
貴女が薄暗い路地で男性と話していて少し驚いてしまって」







「ご心配ありがとうございます、私は大丈夫です」








安室はニコリと笑い、手を壁から離した。
男性らしい指先は、やはり拳銃を握った跡がある。







『彼は恐らく警察官だろう。
マフィア関係なら組織犯罪対策部か…』






父も警察官だった。
だが、父は交番勤務では無かった。






『父は同僚を一人も家に連れてこなかったし、
担当する事件の資料も必ず鍵付きの引き出しに入れていた』






安室は「大通りまで送りますよ」と整った笑顔を見せる。






『何処の所属かも教えてくれなかった』







「…あ」







ふと、気づいてしまった。
父が生前、所属していたであろう組織を。







「公安…」








その瞬間、安室の足が止まった。
振り向いた彼の顔色は、真っ青に変わっていた。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (251 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
700人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» 恥ずかしさが上回り、凶暴化する小泉なのでした。ご質問ありがとうございました。 (2019年12月22日 19時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - なるほど可愛らしいところもあるけどそれ故に凶暴なんですね!返答ありがとうございました。 (2019年12月22日 18時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» コメントありがとうございます。はい、ききます。ですが本人も理解しているので近づかれた瞬間相手は宙を舞うでしょう。あと場合によっては殴られるので誰も小泉にやろうとしません。 (2019年12月22日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - コメント失礼します!ものすごく気になったことなので質問します。小泉ちゃんって脇腹ききますか?! (2019年12月22日 13時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 姫歌さん» ありがとうございます。私もとても楽しかったです。またコラボしましょう。ありがとうございました! (2019年8月17日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もこすけ | 作成日時:2019年6月16日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。