【文スト】この世界と番外編 その十五

＊ ページ21

今、春野はなんと云った？
まさか、そんなことがあるはず。







「市民陣営の勝利です」








「…は？」









Aは、素っ頓狂な声をあげ、顔を上げた。
三人の指がこちらを向いている。






「投票の結果…追放はAさんに決まりました」







「…は？」








「そして、抽選の結果、道連れは太宰さんとなります」







「な、は…！？」







三人は、Aを指差していた。
そして、道連れは三分の一で太宰。
市民陣営から歓声が上がり、部屋の外にいたメンバーが飛び込んできた。







「敦！よくやった！！」







「勝ちましたわ！！」







「敦君おめでとう！！」







市民陣営は敦を担ぎ上げての大騒ぎ。
対して、人狼陣営は、






「太宰ィ、貴様、俺を犠牲にしておいて負けるか！？」







「ごめんね、国木田君にもう一人の人狼は谷崎君だよなんて嘘ついて」








「お陰で俺はAに嵌められたんだぞ！」








「まあまあ、それで？孤軍奮闘した挙句、
悪役顔負けの作戦立てて見事に玉砕したA、今の心境は？」






与謝野の問いかけに、顔を抱えて俯いていたAが呻く。






「くっ…まさか…最後に噛みつかれるなんて…」








「私がタダで騙される訳ないでしょう」







「だからって…くぅ…悔しい！」







最後の最後で見事に吊るされた。
しかも道連れが太宰で、最も勝つ可能性が低かった市民が勝ってしまった。







「Aちゃん…本当にエゲツない作戦立てたね…」







「くっ…あのまま二人が気づかなければ勝てたのに…」







「うわ怖い！！」







「悔しい…くっ…せめて太宰さんを吊るしたかった…」







「あっははははは」







悔しがるAを、太宰は笑いながら撫でて、見事に払いのけられていた。








「じゃあ、市民陣営は賞金ね〜」







賞金10万は市民陣営の手に。
おそらくあれで焼肉にでも行くのだろう。






「ところで、A」







「ひっ」






ひたり、と与謝野の手が肩に置かれ、反対に乱歩の手が置かれる。







「アンタ今回随分おいたしたねぇ」








「市民陣営も随分削られたし」







「あの、ちょ、え…」







「来な、特別コースだよ」







「あ、あ、ああああ！！」







散々会議を荒らした妖狐に同情する者はいても止める者はいなく、
抵抗むなしくAは医務室に連れて行かれるのだった。
これにて、閉幕。

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