許嫁で純愛【呪術廻戦】

十三本 ページ14

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「ん、これからよろしく。」


『よろしくお願いします。』





Aは正座をして頭を下げる。
初日は様々な人に挨拶をして回って終わった。





「お休み。」


『お休みなさい。』





Aと五条の部屋は隣り合わせで、
挨拶を終えると襖を静かに閉めた。





Aは布団に入って数分後、
眠れなかったのか起き上がって窓際に寄る。





『はぁ……』





大きく開いた窓の中央には
白くて丸い大きな月が浮かんでいた。

Aは親元を離れたこと、
御三家がひとつ五条家の嫡男と許嫁になったこと、
父親のあの恐ろしい目のこと、
色々なことを考えたら眠れなかったのだ。





『きっと……呪術師になるんだよね……
大丈夫、何も怖くない。

私は悟くんを守って死ぬつもりでここに来た。
そう決めたんだから、大丈夫。

御三家の人達から当たりが強かったのは仕方ない。
だって古式家は遠縁で、落ちこぼれなんだから。
負けるな私。強くなれば良いの。


……お父様、は………………』





Aは言葉に詰まって月を見つめる。





『…………怖いなあ。
離れられたはずなのに、離れられてない。』





窓枠に腕をおいてそこに顔を沈める。
何度目かのため息を漏らしたとき、襖が開く。





『ｯ！？』





立っていたのは五条で、
普段なら呪力で気付けたはずだが
生憎、考え込んでいたAは気付けなかった。





「寝れねぇの？」


『えっと……うん……考え事してて、』


「……疲れてるだろうし寝た方が良い。」


『……うん。』


「……でも、どうしても寝れないなら散歩行く？」


『え？』




五条はAの手を引いて起こす。




「俺も寝れないから、付き合ってよ。」


『……！』


「灯持ちならいるし大丈夫。
ほら、何か適当に羽織って準備して。」





Aは慌てて掛けてあった羽織を取って
髪も下ろしたまま五条の後を追う。





「まぁ散歩って言っても……
無駄に広い家の周りを歩くだけだけど。」


『う、ううん！
あの……ありがとう、悟くん。』


「……何が？
俺は″俺が行きたい散歩″に誘っただけ。」





草履を履いて灯りを持つ使用人の後ろを
２人で並んで歩いて行く。





「今度はAも散歩、誘ってよ。」





その言葉は「一人で抱え込むな」と
Aには聞こえた。





『うん……！』





嬉しそうに微笑んだAを見て五条も微笑む。






刹那、２人同時に立ち止まって振り返った。

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