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12月・続続々 ページ39

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「(お願い……ですか?)」


『…………て……』






宮司は問いかける。

横になる宮司の枕元には『土地神』が立っていた。






『……開けて…………』


「(開ける……?)」


『戸を、開けて……割って……』






『土地神』は絞り出すように声を発する。






『鏡を、………………』


「(鏡……)」







『お願い…………"自由"を…………!!』







語尾を強めて言うと

それに押されるように宮司が飛び起きる。






「ッハ……ハッ……」






宮司は素早く周囲を確認すると

大急ぎで装束に着替えた。






「今のは……多分、ツチノカミ様や……!!」






酷く冷える夜に

宮司は足袋を履いて外へ飛び出す。





「戸を開けて……鏡を割る……!
神棚の、御神体の鏡を……」





石段を駆け上がり鍵のかかったお社の扉を開く。

深く礼をして宮司はロウソクに火を灯す。





「……失礼します、」

神棚に手をかけ、ゆっくり扉を開いた。





宮司が取り出した鏡は

ロウソクの光を反射して光っていた。





「…………」





両手で鏡を持った宮司は

少しだけ戸惑うように鏡を見つめる。





お告げかもしれないとは言え、

御神体である鏡を割ってもいいのだろうか、と。





「…………」





冷たい風がお社の中に吹き込んで

ゆらりとロウソクの火が揺れる。





宮司はゆっくり息を吐いて

『土地神』の言葉を思い出す。





「……ツチノカミ様は、"自由"をお望みなのですね。
大人の、人間の都合で長い時間を縛ってしまい
本当に申し訳ありませんでした。」








宮司は鏡を顔の前に掲げる。









「……長い間、ありがとうございました……!」









手から離れた鏡は重力に従って真っ直ぐ床へ向かう。









.









.












パリン、と音を立てて鏡は粉々になった。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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