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6月・続続続々 ページ12

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参拝を終えた北が長い石段を下りる。

一番下の段にAが座っていた。





『あれ、信ちゃん上に行ってたん?』


「ツチノカミ様にお参りして来たんよ。」


『……信ちゃんはええ人やなあ。
最近は若い人のお参りは少ないねん。』


「そうなん?」


『うん。前は沢山の人が来てたんやけど
最近は祠で済ませる人が多いんや。』


「へぇ……」





ぱちぱちと目を瞬かせて話を聞く北。

Aはそんな北の手を握る。





『まあこんな話はええねん!
はよ信ちゃんの田んぼ見に行こや!』


「せやな。」





子供体温とは個人差があるのだろうか。





Aの手は北よりもずっと冷たかった。

まるで雨で冷えてしまったかのように。





ほんの少し疑問を抱きながらも

ビシャビシャの道を歩いて田圃に到着した2人。





「浸水……してへんな…………」


『良かったあ…………』





土嚢のおかげか、

氾濫した川の水は田圃に入ってこなかった様だ。





『ここの祠も流れんかったみたいや。』


「ほんまや。守ってくれたんやね。
お礼言っとかな。」


『あっ、うちも!』





祠の前にしゃがんだ北。

隣にAもしゃがんで手を合わせる。





「ちゃんと米が実ったら
ツチノカミ様の所にもお裾分けしに行かな。」


『そらきっと喜ぶわ!
あ、でもうちも信ちゃんのお米食べたいわ……』


「もちろんAにもお裾分けしたるわ。
旨い米ぎょうさん食わせたるで。約束する。」


『ほんまに!?そら楽しみや!!
ほんならうちはお礼に
山の美味しい木の実がなる場所教えたるわ!
これも約束な!絶対に教える!』


「ありがとうな。」


『ええとこめっちゃ知ってんねんで!
山はうちの庭や!』






ふふん、と自慢げに笑うA。






Aの家は山に近いんやろか、

そんなことを考えながら北はAの頭を撫でる。















.



















.
北 side









──────やっぱりAの肌は冷たくて、

ほんの少しやけど着物も湿っているような気がした。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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