お隣、49日目 ページ49
▽
「なあ、俺の好きな奴も教えたるよ」
「え、エッ！なんで、……」
混乱した時の癖で、また視線をきょろきょろ動かす。俺はそんなAにかまわず、また口を開いた。
……まさか、俺が、こんな阿呆女を、と思わず苦笑する。
「俺の好きな奴はな、すぐ泣く。
頭も悪いし、多分運動もできへん。
遅刻魔やし、言うてることの8割意味不明や」
Aはぽかんとした顔で俺の話を聞いている。
「ほんっまに阿呆やし、間抜け面やし、可愛げもあらへん。
バカで愚図でのろまで、一人でなんでもやろうとするくせに、
なんにもできへん阿呆や。」
好きだという割に、文句ばかりを連ねる俺を見て、Aは訝し気な顔をした。お前のことやで、と言ってやりたいのを抑え、話を続ける。
「……でも、なんでも頑張ろうとする奴や。
不器用でも、一生懸命やろうとする奴や。
ソイツと一緒におるとな、なんや知らんけど元気が出んねん。
バカみたいにケラケラ笑っとんのが似合うやつでな、
…親の離婚を自分のせいだとかわけわからんこと言うて
落ち込んでる顔とか、見とうないねん」
なあ、と言ってAの顔を見ると、大きな目からぼろぼろ涙を零していた。ほんっまに、感情豊かな奴やな、と俺は笑ってしまう。
でも、そうやな。
きっと、そういうところが好きなんだと思う。結局お前は『良い子ちゃん』になれなかっただろう。不器用の阿呆だから、仕方ない。
でも、安心せえ。
お前は『良い子ちゃん』ではないけれど、『ええ奴』で『俺の好きな奴』になれた。
それだけで十分やろ？
「好きやで、A……腹立つけど」
一言余計だよ、と涙声で言った後に、俺の大好きな間抜け面で、はにかんで見せたA。そうや、お前はずっとそうやって笑っとけばええんや。
「わっ、私も……！」
「私も…？なんや」
「わ、私も、その…好き、です」
そう言って顔を真っ赤に染め上げたA。
ごめんな、サム、北さん。
こんなに阿呆で可愛いAは俺がもらう。誰にも渡さん。
「…俺と付き合ってくれるか？」
「っ、も、もちろんだよ…！！！」
情けない声に涙でぐちゃぐちゃの顔さえ愛おしいと思った。
でも、二度と泣かせない。俺と付き合ったからには、ずっと笑っててもらわないと困る。笑い疲れるくらい笑って、頬のしわが増えて、しわくちゃになるくらい笑わせたる。
心の中でそう誓って、俺はAの口元に顔を近づけた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです！そちらの曲も聞いてみたいと思います！ (2020年5月27日 13時) (
レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます！！OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました！聞いてみてほしいです！ (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冬田 | 作成日時：2020年5月15日 20時
