お隣、47日目 ページ47
▽
「……なんやお前、顔赤いで」
「エッ！い、いや、気のせいだよ！」
そう言ってそっぽを向くAにムッとする。北さんとは人目もはばからずイチャついとったくせに、その俺との距離感はなんやねん。
そんな俺の不機嫌を察したのか、今度は焦ったように「ホントに何もなかったから！」と弁解してきた。あんな思い切り抱きしめられてたくせに、何もなかったなんてそんなわけがない。
「ホントに、あの、違うから…！付き合ってないよ」
嘘ではない、そう分かった。
その時俺は何故かホッとして、でもそれがなんか嫌で、思わず顔が歪む。それを見てAがまた焦り出すから、笑ってしまった。
「笑わないでよ〜…」
膨れっ面で俺を睨むA。
俺はもう怒りなんてどっかに飛んで行ってしまっていた。目の前のこいつは嘘なんてつけるほど器用じゃないし、阿呆だし、疑う必要なんてないんだ。
「……ね、侑君！」
「あ？なんや」
「侑君は好きな人いるの？」
「っは、は！？！？あ？！いるわけないやろが！」
絶対いる反応じゃん、なんて言ってケラケラ笑われる。でも心なしか少し寂しそうな顔をしているものだから、怒るにも怒れなかった。調子が狂う。
…もし仮に、俺に好きな人がいたとして、どうしてそんなことを気にするんだろう。
「侑君の好きな人は誰？」
「……誰でもええやろ」
「あっやっぱりいるんじゃん！」
「っは！？お前ハメよったな！！！」
好きな奴なんかおらん。
いないはずなのに、何故かAに「いない」と断言することができない。本当は分かってるんじゃないのか、と頭の中で声がした。
くそ、俺にはバレーさえあれば。
「侑君の好きな人は幸せ者だね」
「……やめーや」
そんなことを言われてしまったら、俺はもういやでも自分の気持ちを自覚してしまう。だから、頼むから、やめてくれ。
お願いだから、そんな
「うらやましいな」
泣きそうな顔で笑わないでくれ。
また、あんなに説教したのに、無理して笑おうとするAを見て、俺は胸が締め付けられた。そんな顔をするな。俺は、お前の泣き顔なんてもう見飽きたんや。
最近はずっと泣いた顔や焦った顔ばっかり見ている。だから、そろそろ前みたいに、阿呆丸出しの能天気な笑顔を見せてほしい。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです！そちらの曲も聞いてみたいと思います！ (2020年5月27日 13時) (
レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます！！OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました！聞いてみてほしいです！ (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冬田 | 作成日時：2020年5月15日 20時
