検索窓
今日:52 hit、昨日:13 hit、合計:85,945 hit

お隣、42日目 ページ42




「話って何かな?」


少し緊張したような顔で俺を見上げるAに、柄にもなく心臓が跳ねる。こうやって並んで立つと嫌でも分かる身長差を、何故か意識してしまう。

(……言うんや)


___好きだ、と。

Aには彼氏なんて作ってほしくない。もし作るとしても、それは俺がいい。Aの隣を並んで歩くのも、面倒を見るのも、慰めてやるのも、全部俺がいい。

そんな醜い独占欲が出てきたのはいつからだったか、もう分からない。

気づけば俺はAを女として見ていて、ドロドロした感情に支配されていた。ポッと出のツムや、ご近所さんってだけの北さんに、盗られたくない。


中学生の頃の俺はまだ幼くて、Aに対しての感情に名前をつけることができなかった。でも今思えば、きっとあの時から、俺はAが好きだったんだと思う。

悲しくても無理して笑う痛々しい姿を見て、守ってやりたいと思った。泣き顔よりも笑った顔が見たいと思った。


それが、『好き』という感情だということに、今更気づいたんだ。


「治くん?」

「っあ、すまん……」


あんまりにもずっと黙っている俺の顔を、Aが覗き込む。また心臓が跳ねた。

でも、中々言い出せない。何故かと言えば、俺はフラれるのが分かっているからだ。Aは、俺のことを男として見ていない。

俺がどれだけアピールしたって、Aを女として扱ったって、こいつは俺との境界線を引いて、そこからこっち側へ来ようとしない。

友達以上になることを避けていることなんて、すぐに分かった。



「お、治君…?ホントに大丈夫?なんかあったの?」


そう言って俺を心配するAを見ると、好きという気持ちがどんどん溢れてきて、辛い。でもきっと、言い出さなければずっと辛いままだ。


「……A」

「?なあに?」


言うんだ。フラれたとしても、友達じゃなくなるわけじゃない。そんなことでAは、俺を避けたりしない。そんな奴じゃない。

言うんや、俺。

言え、言え、言え。




「…………好きや」



やっと出た声は、吃驚するほど小さくて、情けなくて、でも確かに、Aの耳に届いた。



.

お隣、43日目→←お隣、41日目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (111 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
174人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 宮侑 , 宮治
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです!そちらの曲も聞いてみたいと思います! (2020年5月27日 13時) (レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます!!OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました!聞いてみてほしいです! (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:冬田 | 作成日時:2020年5月15日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。