お隣、42日目 ページ42
▽
「話って何かな?」
少し緊張したような顔で俺を見上げるAに、柄にもなく心臓が跳ねる。こうやって並んで立つと嫌でも分かる身長差を、何故か意識してしまう。
(……言うんや)
___好きだ、と。
Aには彼氏なんて作ってほしくない。もし作るとしても、それは俺がいい。Aの隣を並んで歩くのも、面倒を見るのも、慰めてやるのも、全部俺がいい。
そんな醜い独占欲が出てきたのはいつからだったか、もう分からない。
気づけば俺はAを女として見ていて、ドロドロした感情に支配されていた。ポッと出のツムや、ご近所さんってだけの北さんに、盗られたくない。
中学生の頃の俺はまだ幼くて、Aに対しての感情に名前をつけることができなかった。でも今思えば、きっとあの時から、俺はAが好きだったんだと思う。
悲しくても無理して笑う痛々しい姿を見て、守ってやりたいと思った。泣き顔よりも笑った顔が見たいと思った。
それが、『好き』という感情だということに、今更気づいたんだ。
「治くん?」
「っあ、すまん……」
あんまりにもずっと黙っている俺の顔を、Aが覗き込む。また心臓が跳ねた。
でも、中々言い出せない。何故かと言えば、俺はフラれるのが分かっているからだ。Aは、俺のことを男として見ていない。
俺がどれだけアピールしたって、Aを女として扱ったって、こいつは俺との境界線を引いて、そこからこっち側へ来ようとしない。
友達以上になることを避けていることなんて、すぐに分かった。
「お、治君…?ホントに大丈夫?なんかあったの?」
そう言って俺を心配するAを見ると、好きという気持ちがどんどん溢れてきて、辛い。でもきっと、言い出さなければずっと辛いままだ。
「……A」
「?なあに?」
言うんだ。フラれたとしても、友達じゃなくなるわけじゃない。そんなことでAは、俺を避けたりしない。そんな奴じゃない。
言うんや、俺。
言え、言え、言え。
「…………好きや」
やっと出た声は、吃驚するほど小さくて、情けなくて、でも確かに、Aの耳に届いた。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです!そちらの曲も聞いてみたいと思います! (2020年5月27日 13時) (レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます!!OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました!聞いてみてほしいです! (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬田 | 作成日時:2020年5月15日 20時