お隣、35日目 ページ35
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「……へへっ、へ…終わるかなあ、これ」
「…終わらへんな」
放課後、作業を始めてから1時間。
一向に終わる気配がなく、段々と疲れも出てきた俺とAは、一旦休憩に入ることにした。背中を逸らし伸びをするAを横目に、俺は買ってきておいたパックのジュースを飲む。
「あ、それ美味しいよね!」
「なんや、お前も好きなん?」
「好きだよ〜」
へへへ、とAが笑う。
疲れ切っていた俺は、どうやら脳みそが正常に働いていなかったらしく、無言でAに飲みかけのパックジュースを差し出した。
「え!いいの!?」なんて言って目を輝かせてそれを受け取ってチューチューと飲みだす。
「…………」
「…………」
10秒後。
Aは漫画みたいに顔を赤くして、何も言わずにパックジュースを俺に返した。
「……じ、事故や!!!別にやましい気持ちなんか、」
「そそそそうだよね!!いや私も別に気にしてない全然!」
…関節キスなんかでこんなになるんて、俺らしくない。
それでも、目の前で顔を真っ赤にし、ちらちらと俺を気にしているAを見て居たら、俺まで変な気分になってしまった。
(あかん…これじゃ俺がヘンタイみたいやんけ!)
なんとか冷静になろうと、手に持ったジュースを飲む。
「……あっ」
「あ、……」
あかーーーーーん!!!!
冷静になろうとしたはずが、更に状況を悪化させてしまった。
俺がストローに口をつけたのを見て、更に顔を真っ赤にするA。やめろや、そういう反応されると困るやろ!お前のせいやからな全部!
しばらくの間沈黙が続いた末、先に口を開いたのはAの方だった。
「ごっごめんね、!あの、その…なんか、申し訳ない!」
勢いよく頭を下げたA。
おいなんの謝罪や。変な感じになるからやめろや!
「べ、別に俺は気にしてへんし……」
「あ、そっそうだよね…!侑君慣れてそうだしね!」
「は!?なんでそうなるんや!!!!」
何も慣れてへんわ。コイツの中の俺のイメージどうなっとんねん。
はあ、と深いため息をつく。休憩していたはずなのに、体力を使ってしまったような気がする。
それにしても、
まさかAが間接キスでこんなに焦るなんて、予想外だ。顔を真っ赤にして戸惑う姿が、いつもの阿呆なAのイメージとあまりにもかけ離れていたせいで、思わず動揺してしまった。
…あかん、相手はAやぞ。
俺はそう自分に言い聞かせ、作業を再開した。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです!そちらの曲も聞いてみたいと思います! (2020年5月27日 13時) (レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます!!OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました!聞いてみてほしいです! (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬田 | 作成日時:2020年5月15日 20時