お隣、30日目 ページ30
▽
「っ、へ、へへへ、ふふっ」
「は？」
自分でも少し言い過ぎたと思った。
しかし、遊具の中から聞こえてきたのは何故か少し嬉しそうな女の声。なんやこいつ気色悪い。Mなんか？怒鳴られて興奮したんか？
なんて失礼なことを考えて居たら、女が喋り出した。
「…なんかね、楽しい気分だよ、私！」
「はあ？気ぃ狂っとんのか？」
「気は狂ってない、…とは言い切れないけど」
でも、と女は続ける。
「すっきりした！…まあ、そんな簡単に変われないし、しばらく『良い子ぶってる女』だけど、前よりは気が楽だよ」
「ほお、そりゃよかった」
「思ってないでしょ」
女はケラケラ笑う。楽しそうに、笑う。
おかしな女や、と俺は眉を顰める。泣いたり笑ったり、忙しいやつやな。
…まあ泣かれるよりは、笑っていてくれた方が楽かもしれない。不思議とこの女の笑い声は、他の女と違って心地が良い。
「きっと、私は脳みそが腐ってるんだね」
「せやな、腐りまくっとる」
「君は？」
「俺は腐っとらん」
先ほどとは打って変わって、楽しそうな女。
そこで、俺の腹はぐうっと鳴った。
その音がわりと大きかったようで、女は「お腹減ってるんだね、帰った方がいいよ」といった。そんなこと言われんでも分かっとる。
「話、聞いてくれてありがとう」
君はきっとホントの良い人だね、と女が言う。
んなわけないやろ、と思いながら否定の言葉を口にしようとすると、それを察したのか、俺の言葉を遮るように喋り出した。
「あのね、君！私、実は特殊能力があるの」
「はあ？あるわけないやろ…」
「ううん、ホントなの」
それはね、何かっていうとね。
女はもったいぶるように話す。
俺は半ば呆れ半分で、耳を傾けた。
「人を見る目があるの」
「……下らん、帰る」
「ちょ、待ってよ！駄目です！」
「ダメとかあらへん」
駄目だよ駄目だよ、と言いながら、遊具から出てこようとはしない女。なんやねんこいつ。ほんまに帰るぞ。
「じゃ、最後にこれだけ！」
「なんや」
「あのね、君は私の友達でしょ？」
「今日初めて話したけどな」
聞いてきたくせに無視すんなや。
「……だから、良い人なんだよ！」
「意味が分からへん」
だからね、と言って女は続ける。
「君は、良い人だよ」
……意味が分からへん。
意味が分からへんけど、きっと嘘何てつけないだろうこの姿も見たことがない阿呆女に、良い奴やと言われるのは悪い気がしなかった。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです！そちらの曲も聞いてみたいと思います！ (2020年5月27日 13時) (
レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます！！OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました！聞いてみてほしいです！ (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬田 | 作成日時：2020年5月15日 20時
