お隣、24日目 ページ24
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正直、席替えして侑君が隣だ!ってなった時、ちょっと嫌だったんだよね。
__水野は突然そんなことを真面目な顔をして言い出した。
「急に失礼やな」
「いや、続きがあるの、聞いて!」
「なんや」
「最近はね、侑君の隣に座ってるのが一番安心感あるんだよね」
治君とか北さんより。
水野はそう付け足して、俺の顔を見た。真面目な顔でおもろいこと言うなや。
大体、俺がサムや北さんよりおかしな男だと思われていたなんて心外だ。あの二人に比べたら俺はまともに決まっとる。
隣で「あ〜落ち着く!侑君は私にとっての温泉」などと意味不明なことをほざき倒してる水野をガン無視し、俺は物思いに耽った。
結局、俺は水野とどこで知り合ったのか。
その答えが未だに知れていないのだ。
チラリと隣を盗み見ると、阿呆面で独り言を呟く水野が目に入る。俺はほんまに、こんな阿呆女と知り合いだったのだろうか。
「?どーしたの侑君、あっ惚れた?」
「惚れてへんわ」
「じゃあそんな見つめないでよ〜」
照れちゃうわ!とわざと高い声をだして俺をからかう水野。駄目だ、やっぱり思い出せない。だけどどこかで、会ったような気がする。
水野みたいな阿呆面で、馬鹿で、どうしようもない女に。
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「っわ、北さん!」
「A、聞いたで、赤点取ったんやってな」
「……申し訳ございません」
本を返しに図書室にきたら、Aがいた。
誰もいない図書室の勉強机に、Aは突っ伏していた。恐らく寝ていたんだろう。少し眠たそうな顔をしている。
図書室でAと会うのは、あの日以来だなと思い懐かしさに口元が緩む。俺が、Aと仲良くなるきっかけとなった、あの日だ。
「まあ、次頑張ればええんや」
「はっはい!切り替え大事っすよね!」
「喋り方変わっとるで」
えへへ、と笑うA。SNSでは頻繁に喋っている(一方的に送り付けている)が、現実では学年も違うし中々会う機会がないため、久々の会話だ。
俺はあんまり喋る方ちゃうし、どちらかと言えば無口なタイプやけど、Aはそんなの気にせんでベラベラ話してくれるから、一緒にいると心地良い。
Aは阿呆やけど、思慮も常識もあるし、ええ奴や。
誰も見とらんくても、『ちゃんとやる』奴や。俺はそれを知っとる。
……俺だけが、知っとる。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです!そちらの曲も聞いてみたいと思います! (2020年5月27日 13時) (レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます!!OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました!聞いてみてほしいです! (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬田 | 作成日時:2020年5月15日 20時