お隣、21日目 ページ21
▽
俺がまだ中学生だった頃の話。
(あっつ……)
ツムにじゃんけんで負けた俺は、30度を超える猛暑の中アイスを買いに近くのコンビニへ向かっていた。
ダラダラと流れてくる汗を乱暴に拭いながら、コンビニまで急いでいると、通りかかった公園で見覚えのあるひょっとこを見つけた。
こんなクソ暑いのに、お面とか、バカなんちゃうか。
その時の俺は、侑に負けたこととあまりの暑さに苛立っていたのだと思う。いつもであれば無視して通り過ぎるところを、なんだか無視できず、気づいたらソイツに近づいていた。
「……おい」
「っえ、だ、だれ？」
「俺や、治や」
急に声をかけられ吃驚したのか、Aは少し肩をびくつかせた。
心なしかいつもより鼻声だし、元気がないような気がして、俺は首を傾げる。Aに元気がない日なんて、俺がツムと喧嘩しない日レベルで珍しい。
先ほどまでの苛立ちは治まり、今度は逆に好奇心が湧いてきた。
元気のない人間に好奇の目を向けるなんて最低かもしれないが、『あの』水里Aが落ち込んでいるなんて、誰だって興味があるに決まっている。
「お面、取れや」
「……え」
「暑いやろ、取ったほうがええ」
「っちょ、やだ…！やめて！返して…！」
どんな顔で落ち込んでるのか、見てみたかった。
そんな理由で、半ば強引にひょっとこをはぎ取った。
しかし数秒後、俺はそのことを後悔する。
「……泣いとったんか」
「な、泣いてないよ！やだなあこれはね、あの、」
目元をごしごしと擦り、必死で笑顔を作るA。
なんや、その顔は。いつもの阿呆面はどうしたんや。
俺はそう言いたかった。そんな顔は似合っていないと言ってやりたかった。
確かにちょっと落ちんでいるところが見たいと思ったのは事実だ。しかし泣いているなんて思いもしなかった。
「あの、違うからね、ちょっとね、転んで…」
「嘘つくなや、どこも怪我してないやろ」
「……ちがくて、その」
Aの視線はきょろきょろと宙をさまよう。
必死で言い訳を探しているのが見え見えで、俺は心が痛くなる。
人に言えないようなことなんか。俺には言いたくないんか。
中学生らしかぬ、ドロドロとした感情が胸に流れ込んで気持ちが悪い。こんな感情は知らない。俺はただ、少しからかってやろうと思っただけなんだ。
誰かに聞かれたわけでもないのに、俺は必死で言い訳をした。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです！そちらの曲も聞いてみたいと思います！ (2020年5月27日 13時) (
レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます！！OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました！聞いてみてほしいです！ (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬田 | 作成日時：2020年5月15日 20時
