0日目21 ページ22
「けど探索はちゃんと全部屋せなあかんやろ、俺とアランでこっち見とくから他次の部屋行っとり」
「まあ、北ならまあ……」
主将を務める北がテキパキと指示を出せば、尾白を含め特に反対するものも出ず、北と尾白以外の五人は次の部屋に向かって廊下を歩いていった。
「なんやったんやろうなあの部屋」
「確かに、ああも必死に隠されたら余計に気になるよな」
治と銀島が会話するが、気になるに留まるだけで二人とも無理にでも入ってみようという気は特に起きなかった。
「次はーこの部屋……、くらぶ、ばー？」
先頭を歩いていた赤木が次の扉の前にたどり着きそこに書かれた部屋名を読み上げるが、あまりにもこの場に似つかわしくない施設名に本来カタカナで表記されるものがひらがなになって戸惑いとともに彼の口から溢れた。
「……ここ連れてきたやつ誰だか知らんけど俺らんこと舐め腐っとらん？なあ練？」
「かもしれへんけどとりあえず探索しよ、な？」
微笑んではいるものの額に青筋を浮かべ、ハイライトのない瞳で振り向く赤木。普段めったに見ることのない先輩の怒り心頭なその様子に二年生が震え上がる中、尋ねられた大耳は彼を宥めながらもその部屋の扉を開いた。
その先に広がっていた光景を一言で表すならば、開店準備前のクラブバーといった具合であった。手前には洒落たカウンターテーブル、その奥には棚に並べられた豪奢な銘柄のラベルが貼られた酒瓶の数々。そこを少し離れたところには所謂立派なダンスフロアがあり、その周辺にはDJ台やステージ、頭上には止まったままのミラーボールが設置されている。健全な部活生である彼らは当然実際にそういった店に出入りしたことはないが、テレビや映画などで見たまんまのものが目の前にあり、謎の緊張感が全員に走った。想像と違う点は室内の光源は柔らかい橙の蛍光灯だけという箇所だけであった。
「こりゃ、確かにクラブバーですね」
高校生ばかりの建物内でこんな空間があることに侑が若干引きながら、足を踏み出す。彼がキョロキョロとあたりを見回しながら向かったのはバーカウンターで、実際のお店であればバーテンダーなどがいそうな裏手側に回り込んで、そのまま水道や冷蔵庫のある辺りを調べる。
「こっちの扉は……トイレですね」
「こっちは喫煙所です、煙草の自販機もあります」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星を廻せ - 中の人です。表紙作りました。人選は完全に我の趣味です。本編などには何も関係ない趣味の人選です。 (2023年3月24日 4時) (
レス) id: 853819a2bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星を廻せ | 作成日時：2023年3月19日 7時
