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まだ延命の条件は達成していない。
縛りを反故にした時のペナルティは、考えたくもなかった。

それでも何も無い空中を掴んだのは、もうそれ以外手段がないから。

人間らしい心が戻ってきた私は、いつも通りの判断をできたと思う。



ぐっと左手に力を込め何かを引きちぎるように腕を動かした時、背筋に走った悪寒。



__本能が、ソレ(・・)をするべきでは無いと叫んでいる。



全身が粟立ち、まるですぐ隣に死神がいるかの如く感じられたその瞬間は、正直言って死を覚悟した。


一瞬怯んだ意思に、愚か者め、と己を叱咤する。


今度は、迷いなく腕を引く。

ぶちぶち、と誰にも聞こえないはずの、花々の断末魔が聞こえて。




『__ぶ』




その刹那、荒らされた彼岸花と私の命が直結しているのかと錯覚するほど、重い代償が返ってきた。



吹き出た鼻血と、頬を伝う血涙。

耳鳴りが止まず周囲の音が遠のく。

口内に感じる鉄の味、意識に空白が生じるが、握った手はまだ離さない。




「…余計な事してくれてんじゃないよ、全く」




横から気だるげな低い声が聞こえてきたかと思えば、次の瞬間には吹き飛ばされた体。


みし、と生身の体にもろに入った蹴りに体が悲鳴を上げ、受身をとる暇もなかった私は無様に地面に体を打ち付けながら転がる。

乱闘で出来上がった瓦礫の山に背がぶつかることで止まり、痛みで顔に苦悶の表情を浮かべながらも攻撃してきた人物を見遣る。
凍り付いた自分の脇腹と周囲に漂う冷気が、見るまでもなくその人物を象徴していたのだが。




「少しでも情けをかけようと思った俺が馬鹿だった。

やっぱお前、殺しとくべきだったな」

『ハッ、か弱い小娘だと舐めてたのがいけなかったんですよ』




三人目の海軍大将、青キジ。
私を、インペルダウンまで連行した人間でもある。



面倒くさそうに息を吐いた彼は瓦礫の欠片に息を吹きかけ出来た氷の短剣を手に取る。

対する私は全くの丸腰で、ペナルティによる大量の出血で頭がガンガンと痛んでいる。

青キジがこちらに歩み寄り、死にかけの私にトドメを刺そうと腕を振り上げた。


私はただぼーっとそれを見て__口角を吊り上げた。




依然、左手は握りしめたままだった。

#→←無理をしてでも



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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (2023年5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時

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