笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

新曲の形態 ページ7

サインをある程度百と書いてる時、ボブに話しかけられた。

「セト殿下を知っているのでスか？」

『ああ、うん。会ったことはないよ。見たこともない。“聞いたことがあるだけ”』

もう顔は思い出せないけど、名前もおぼろげだったけど。
だから、もうきっと忘れてしまうんだろうな。

思いを馳せてると、百が思い出したように聞いてきた。

「そういやユキ、曲できたって言ってたけど、楽譜もらった？」
『え？･･･これかな？』

さっき千からもらった紙の束をめくると、楽譜だった。

あれ？
私、普通に千の家に行ってたよね？
作るから来るなって言われてないんだけど。

『･･･いつ作ってたの。千。』

「え？ライブの初日には楽譜出来たって言って、おかりんもそん時すでにデモ渡されてたみたいだし、MV案も進んでるって言ってたよ？引退発表の件があるから、Aには、終わってからって思ってたんじゃない？」

ああ、なるほど。
･･･私が寂しがるんじゃとか思ったのかな。

そんな事を思いながらパラパラ楽譜を見ながらめくる。

【あれ･･･？】

エレクトーンだけの楽譜しかない。
これ、バンドじゃなかったっけ？

『･･･エレクトーンでするの？この曲･･･』
「ん？エレクトーン以外で、すんの？ヤスと言えばエレクトーンだろ？」

『だってこれ･･･』
「ん？」

『･･･新しい楽器･･･私の記憶では･･･』

いや、これは言っていいの？

“今は言えないけど、妊娠以外の意味があるんだよ。”

新しく楽器をやる意味。
千は、妊娠以外の意味はなかったらしいけど。

「新しい楽器は、その曲でやるつもりはないよ。」
『え？』

「やるなら明日の収録。年始の放送用。」

え？明日の収録？
年末用じゃなかったっけ。

スケジュール的には、生放送のNEXT Re:vale前に、ヤスの最後のNEXT Re:valeを収録する予定だったはずだ。

ポカンとしてると、百が笑った。

「言ったでしょ？妊娠以外の意味があるって。明日のNEXT Re:valeの収録は、収録関係者以外、立ち入り禁止の、厳重警戒の中で行われるんだよ。」

『年始･･･。』

「年末放送用だと思った？ヤスじゃなくて、Aで出んの。」

百は、ヤスの引退が決まってから、いつなら信用できる人たちだけで収録が出来るのか考えて、調整をすると、明日しかなかった事を教えてくれた。

そうか。
私の三つ目の条件をクリアするために考えたんだ。

私が、Re:valeであるために。

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