笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

彼女のための音楽　〜百side〜 ページ37

屋上の撮影。
あの日から思ってた。

やっぱりオレにとっての“未完成な僕ら”は、バンさんとユキとAの3人の歌なんだ。
あの歌は、オレにとって救いで、光だ。

ユキが、Aを光だと言ったのも間違いじゃない。
けど、それだけじゃなくて･･･

初めてRe:valeのライブを観た時の感動。
オレの気持ちを救ってくれた歌や曲、３人の振る舞いや笑顔。

全てが宝物で間違いなく、オレの光だ。

【ユキとAとバンさんと、4人でいる時間も好き。】

けど、３人の中に入って嬉しいけどおこがましいいとか、Aの、ユキやバンさんに対する気持ちが羨ましいとか、そう思ってたけど、そうじゃないんだ。

“今の私がいるのは、Aのおかげ”

あれは、オレの心にも響いた。

今のオレがいるのは、あの時、Re:valeに出会えたおかげ。
オレは、ユキとA、バンさんの間に、お互いを大事に思う気持ちがあるから好きなんだ。
そしてそれが好きな自分も。

きっと、ユキと“未完成な僕ら”のアレンジをやったって、いつまでも納得いかない。
きっと、Aから、ユキやバンさんに対する気持ちと同じものも向けられて、独り占め出来ても、納得できない。

そこに、オレの好きなものは存在しないから。
それは、今までの思い出を上書きする事になってしまうから。

【それは、嫌だ。】

Aの記憶がなくなっていくのも寂しかった。
お互いの気持ちは変わんないって思っても、それでも思い出と同時に気持ちが消えてくような気がして、寂しかった。
Aの記憶がだいぶ減ってきてから思ってたことだ。

でも･･･
オレが一番欲しかったものは･･･

オレは、以前反省文を書いた時の便せんを出して、ペンを手に取った。

・

番組放送終了後、ユキの家に来た。

「ユキの部屋に来るのも久しぶりだね。」

「そうね。いい肉があるから、今夜はすき焼きにする？」
「すごい！あ、でもそれなら、Aも一緒･･･」

「じゃあ、今度一緒にしゃぶしゃぶでもしよう。」
「うん！」

すき焼きの材料を鍋で煮てる間に“未完成な僕ら”のアレンジだけど、と切り出した。

「ユキが何度、アレンジを作ってくれても、ずっとしっくりこなかった･･･。ユキが悪いわけじゃない。どれも最高だったよ！でも、オレが歌ってるイメージが、どうしてもわかなかったんだ。･･･その理由が、屋上ライブの時わかった。」

「何･･･。」

ユキは少し不安そうに、でもジッとオレを見て聞いてくれた。

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