笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

屋上の遊園地 ページ35

屋上の撮影が終わった後、エレベーターでみんな順番に降りる時、百が言った。

「楽しかったー！なんかさ、屋上って、昔を思い出すよね！」
『昔？』

「屋上の遊園地！」

『ああ！売れなかった時、屋上でやったイベントライブ？』
「そうそう、それ！」

「へえ、懐かしいね。」

『今じゃ、屋上に小さい遊園地ってないもんね。』

「モモは子供と学生にモテてたね。お父さんは歌。」
「お母さんはユキ！」
『家族連れが多かったね。』

寂れた遊園地だった。
もう今はないけど、おかりんと一緒に、歌って踊ってる2人を見てた頃だ。

『あの頃の私が、今こうしてるなんて知ったら、驚くなあ･･･』
「それはオレも！」
「そう？トップになるって言ってたんだから。想像ついた未来でしょ。」

当然の事のように言う千に驚いて、百と一緒に目を丸くするも、すぐに目を細める。

『ふふ、確かに。』
「さすがユキ！イケメン！」

それぞれ着替えに行ってから帰った。

番組放送終了後、楽屋にいた時に千の電話が鳴った。

【･･･すごい上機嫌･･･】

「貴方がいいなら、僕は別にいいよ。」

「･･･声が得意気ですね。」
「･･･きっと、例のプロデューサーからだよ。素直じゃないんだから･･･」

百も凄い嬉しそう。

千が電話を切ると、千の表情が、ぱあっと笑顔になって、こっちを見た。

「やった、説得できた！」

『良かったね！』
「ユキ、最高〜！全米ナンバーワンのネゴシエーター！」

「「イエーイ！」」

２人がハイタッチ。
千が私を見るから、私も笑って手をかざすと、パンッといい音がした。

「おめでとうございます！」

「･･･いよいよだ、了さん。あんたのピアノ線を切ってやる。その前に･･･」
「「『その前に･･･？』」」

「ブラホワの事と、ツクモ社内のクーデターかな。あと･･･」
「「『あと？』」」

百が千の方を真っ直ぐに見た。

「“未完成な僕ら”のアレンジで、話したいことがあんだけど･･･」

「いいよ。じゃあ今夜は僕の家で食べる？･･･Aには悪いけど。」

『いいよ。適当に食べるから。のんびり新曲でも考えとく。』

来年に発売するCDの一曲だけ担当することになったから、作らないといけない。

“記憶がなくなった後、最初に自分で作る曲”

･･･記憶がなくなった事は、口にするのは簡単だけど、人の記憶だから、明確に証拠というものが提示できない。

百と千に気づいてもらうしかない。

そう思いながら、家へ帰った。

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