笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

スクープ第3弾　2　〜百side〜 ページ29

局に着いて、楽屋でパラパラと雑誌を簡単に読んだ後、今日の番組関係者に挨拶と世間話。
記事を心配してくれる人達に、大丈夫！心配してくれてありがとう！って笑顔で返す。

Aが時々言う。
周りは良い人達ばかり。
優しい人達ばかり。

スッゴく良くわかる。

でも、それはAが優しいからなんだよ。

優しい気持ちは伝染する。
優しくされてると分かると、優しくしたくなるもんなんだ。

でも、それに気づかない人は可哀想だ。
報われない気持ちが存在すると言うことだから。

【･･･本当は、了さんも、気づかない側なんだろうけど･･･】

オレはもう、応える気はない。
優しくするつもりもない。

だけど、誰かが了さんに応えられる人がいれば、気づいて、救われんだろうなとは思う。

そろそろAが来るかもと思って楽屋に戻ると、着替え終わったAがメイクを始めていた。

『百、おはよう！』
「おはよ！今日テレビ見た？」

『天気予報と占いだけ見た。芸能は見てない。･･･何かあった？』

「オレの一言で、そこまで考えられるヤス、さっすが！」

言いながら、今朝買って少し読んだ雑誌をテーブルに出した。

Aがメイクを途中でやめて、ソファに来る。

『また？ネタ尽きないね。』
「うん。オレとしちゃ、別に気になんないんだけど、一つだけ。」
『ん？』

「ヤスの引退理由、どっかで聞かれちゃうと思うけど、Aのこと、擁護して。」

ヤスが後任にAを推すのは最終手段だと言われたし、そこまで言わなくても良いけど、Aではなく、ヤスという役の立場で発言して欲しいと言った。

【A自体は、自分の意見を言ったり表現する場がほとんどない。ユキやヤスは、歌詞や曲に乗せたり出来るし、オレはバラエティがあるから良いけど。】

今、Aの人気を落とすわけにいかない。

Aは分かったと頷きながら、雑誌のページを捲る。
オレの記事を見て止まった時、楽屋のドアが開いて、ユキが来た。

「おはよう！ユ･･･」
『はあ！？何コレ！』

「おはよう。モモ、ヤス。どうしたの。」
『おはよ！見て！！』

Aは、バーンと雑誌を開いて、ユキに向けて見せた。

「今度はモモの記事？･･････は？」

ユキが鞄を置いて、Aの手から雑誌を受け取る。

“大学のサッカー部の友達の暴露！”
“リハビリをしっかりすれば、治る怪我だったのに、やる気を無くしてすぐに退部した。”

オレの記事はそれだった。

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