仮定 ページ15
15.仮定
審神者部屋で兼定と2人、黙々と作業をしながら私はぼんやり考えていた。
兼定はまだ私を主と認めようとしない。意外と強情なところは、さすがはご先祖さまの刀といったところか。
｢…土方歳三は、煙草なんて吸わなかったでしょ｣
唐突に私が尋ねると、兼定は筆を止めもせずに｢当たり前だ｣、と短く答えた。
いい加減、私を見てほしい。ご先祖さまじゃなく。
｢土方さんが煙草を吸ってたら、歴史は変わってたと思う？｣
兼定は相変わらずこっちを見ないまま鼻で笑った。
わざとこっちを見ないようにしてる。
｢そんなことじゃ歴史は変わらねぇさ｣
ふーん、私はしばらく沈黙する。
｢私は、1日に10本この棒切れを吸い潰してる｣
｢…あ？｣
｢1ヶ月で30本、1年で360本になる。それを10年続けたら3600本。塵も積もれば山となるってやつ。私の肺はもう真っ黒｣
｢おい、何が言いたい｣
｢土方歳三が喫煙者だったら、もしかしたら五稜郭で死ぬこともなかったのかもしれない。もしかしたら沖田総司のように肺を患って早死したかもしれない｣
｢…黙れ｣
｢もしかしたら、そもそも新撰組に入らなかったかもしれない｣
筆を持つその右手にぐっと力が籠るのが分かった。畳を蹴ってこっちに飛び出してきて、私を押し倒そうとするのも分かってた。
分かってて、されるがままにした。
長い黒髪がばさりと垂れる。荒い息が私のまつ毛にかかる。
兼定の持つ筆が、まるで刀か何かのように私に向いていた。
｢黙れ。あの人はそんなことしない。あんたとは違うんだ｣
すぐ近くにあるその顔を見上げて、私は笑った。
｢分かってんじゃん｣
兼定の目が大きく見開かれる。
私はその澄んだ瞳に射し込む夕日を、下からただ眺めていた。
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切れかけミサンガ(プロフ) - 孤縷さん» うわっ本当だバカがバレてますね…ご指摘ありがとうございます、他にも何かあれば仰ってください！ (2018年1月29日 19時) (
レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
孤縷 - あの…15ページで、１日に10本なら1ヵ月では300本ではないでしょうか。一年でも3600本になりますし。なんか偉そうにすみません。続編でも頑張ってください! (2018年1月29日 16時) (レス) id: 6e76e80232 (このIDを非表示/違反報告)
切れかけミサンガ(プロフ) - *posu*polejumpさん» 有難うございます！少しだけお待ちください_(:3 」∠)_ (2018年1月29日 6時) (レス) id: 7b9e52a361 (このIDを非表示/違反報告)
*posu*polejump(プロフ) - 続編頑張ってください！！ (2018年1月28日 18時) (レス) id: 43ac6ebefc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：切れかけミサンガ | 作成日時：2017年12月27日 11時
