心残りの雪印 ページ41
弟妹を志村姉弟に託し、Aと銀時は自宅と出稼ぎ先に戻ることにした。神楽はまだ遊びたいと恒道館に残っている。
そう長くない道のりだが、なんだか沈黙が多い。かぶき町の喧騒がなぜか、程遠く聞こえる。
「あ、あー……そういや、金平糖。ありがとよ」
「え? あぁ、はい。依頼料なので……」
「いっつも、あげてんだっけか?」
「はい。稽古頑張ったねとか、寺子屋の試験でいい点取れたね、とか……そういう、些細なことなんですけど」
「いんじゃね? 俺も甘いもんのためなら仕事頑張れるわ」
「銀時さんは毎日仕事してくださいね」
普段の稽古着で帰路につくAを見やり、少しだけ歩幅を狭めた。
袴で歩くAはそれに気づき、歩く速度を緩める。
「……気になってるか?」
「え?」
「あの…なんつったっけ、ゆ、雪印?」
「……雪慈くんのことですか?」
「そう、それ。オメーよ、我慢してるつもりかもしんねぇけど結構わかりやすいのな。あのチンピラ警察共が話聞くーっつったときも、竹刀ブン回してるときも、なんか釈然としねぇ顔してたよな」
「そう……ですかね」
「そうだよ。あの、髪長い方の弟? 龍之介つったっけ? 心配して俺んとこに来たんだよ。『姉ちゃんなんか悲しそうな顔してるけど大丈夫かな』ってな」
「龍が?」
「眼鏡の妹もだよ。『楽しそうな顔してんのに、寂しそう』とかっつってな。もう姉ちゃんレーダー高性能すぎるわ」
「美菜も、」
「そんくれぇ分かりやすいってこった。お前がアイツをどう思おうが、俺ァ知ったこっちゃねぇしな。どうこうできやしねぇが、腹の底に溜まった鬱憤晴らすくれぇはいいんじゃねぇの?
第一、姉ちゃんだからって気負いすぎなんだよ。姉ちゃんだからって我慢する筋合いなんかねぇんだよ」
「銀時さん……」
「わざわざ化けもんが集まる店なんぞに出稼ぎして、毎月決まった分の金送ってよ。それ誰のためだ、あいつらのためだろ。
その金がどう使われたなんざ知らねぇが、お前の
一発で済んだ気にはなれなかった。
土方から聞いた話によると屯所の牢獄で取調べを受けており、サディスティック星の皇子が考案した拷問に掛けられているとのことだった。
どうせなら、拷問でもなくていいからもう二発、三発くらい殴らせて欲しかった。それで気が晴れるか分からないが、どうしても。
「……忘れ物、しました」
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時