真選組と大前流派 ページ21
「剣術と合気道、両方やってたんですよ」
「ほう、それであの汗か」
「時間は長いし、一本一本が重いんですよ。吹っ飛ばされた方もすぐに立つし」
「だから壁凹んでんのか」
ほんの僅かだが、長兄が弾き飛ばされた際の痕跡が残っていた。拳一つ分ほどの凹みだが、隊士でも人一人吹っ飛ばす技能を持つ者はそう多くない。
平静を装う土方の額に、滴が垂れる。江戸で数々の攘夷浪士を相手取ってきたが、一般人でここまでやる人間はそうお目にかかれなかった。万事屋は例外だ。あれは一般人じゃない、ニートだ。
「稽古に入る。準備体操の後、打ち込みだ」
「「「ハイッ!!」」」
「お前らも打ち込みに参加してもらうぞ。いいか?」
「はい!! ありがとうございます!!」
溌剌とした返事をしたのは次男だ。近藤に稽古に参加させて欲しいと頼んだのは他でもない彼で、根っからの剣術好きらしい。掌の剣だこや血豆がそれを物語っており、子どもに似つかわしくない立派な剣士の手をしていた。
準備体操を怠っては稽古のケガに繋がる。とはいえ、すぐに剣を振りたがる隊士たちは簡単に運動を済ませて素振りを開始する傾向にあった。
「お前んとこじゃ、準備運動はどうしてんだ」
「うちは各自です。ただ、関節を結構使うので柔軟体操はやってますね。肘とか、手首とか」
「膝関節もか」
「そうですね。全身の関節はとにかくやれって、先代からの教えで」
「後で詳しく聞かせて貰ってもいいか」
「いいですよ」
副長として隊士の身を預かっている以上、小さな怪我から四肢の損壊まであらゆる身体の影響には気を遣う。今は大丈夫だと余裕をこいている奴ほど、後に病院に運ばれたりするのだ。どこの中学生だ。
そうこうしている間に、打ち込みが始まる。大前家の長女、長男、次女、次男は隊士に。三女と末妹は、山崎が相手取ることになった。
「構え!!」
ドタン、ダン、と響く踏み込みが足裏を通じて全身に伝わる。大の大人で腕に覚えのある男共の迫力は大きい。
にも関わらず、昨日の脅えを一切払拭した大前流派門下生の男児らは真剣な目付きをして相手を見据えていた。
しばらく打ち込みをした後、やめの合図がかかる。何度か相手を変えて打ち込みを再開する。土方も参加し、ブレる構えを修正したり呼吸の乱れを指摘したりする指導にあたっていた。
それはAも例外ではなく、かといって指導を受けるばかりではない。土方に請われ、どこが悪いと聞かれ膝が伸びてますと指摘した。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時