朝から筋肉フル活用 ページ20
防具を外し、ああようやく終わるのかと竹刀を携えた隊士たちが道場に爪先を上げた。だが、先程の踏み込みとは比べものにならないくらいの地響きによって浮かせた踵を地につけた。
なんだなんだと身を乗り出してみれば、道着のままフローリングに叩きつけられていた。またもや背中から。したたかに。
防具を外したその瞬間から合気道の稽古が始まるのだ。よくポスターなんかで見かける、両足を天井に向けて浮いているポーズをとっているのは末妹だった。やめてやれよ。
手首を返して押さえつけるものから、派手に宙を浮く技まで様々ある。もちろん、Aも投げるばかりではなく、門下生一同から技を掛けられていたがすぐに立ち上がる。ひたすら取っ組み合い、投げては押さえつけ、気がつけば水浸しができるまで汗が滴っていた。
「整列!!」
「「「ハイ!!」」」
「着座!!」
ざっと座るさまは統率がとれており、1分間の黙想。正面、互いに礼をして大前家の稽古が終了した。
疲労で重くなっているであろう身体を動かし、手拭いで水浸しを拭き取った。最も身体を動かしたはずのAが一番動きが軽い。
袖口で額を拭い、はあと溜息が零れたところで廊下に屯う隊士らと目が合った。
「あ、おはようございます」
「お、おう……」
「おはようございます!!」
「い、いつもこんな感じなの?」
「はい。普段はもう少し長いんですけど、この後屯所の皆さんとの稽古があるから抑えめにしようって」
ね、と笑い合う女は師範代の顔つきとはまた変わっていた。抑えめってなんだっけ、アタリメの新種?
明らかに屯所での稽古よりも時間が長いし、一つ一つの稽古の内容が濃い。防具を付けていても人間が出す音の範疇を超えていた。
そこへ、幹部勢が合流する。未だ稽古場に入らない隊士たちに一声を投げかけた。
「オイ、何やってんだテメェら」
「ふ、副長!! おはようございます」
「ンなとこでゴチャゴチャ集まりやがって、邪魔だっつーのが分かんねぇか」
「いや、あのですね……」
「んだぁ、山崎。口答えするようなら士道不覚悟で切腹させんぞ」
「理不尽すぎません!? 違いますよ、皆で稽古見てたんです!!」
「稽古だァ?」
ひょこっと覗き込むと、汗をだくだく流しながらもう一枚の手拭いで顔を拭く大前姉弟らがいた。なるほど、先に入っていたのか。
それにしては妙だ。剣術ならば防具を着用しているはずだが、道着のまま。傍らに寄せられた防具一式はなんなのだろうか。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時