吸血鬼は音楽を好む【歌い手】 (ページ32)

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Aside
とりあえず翌日の放課後。
天月さんには昼に個別で説明して今後の事を決める。
直ぐに決めろなんて言わない。
考える時間は必要だから与える。

ピアノを弾く。大好きな曲。
まふ君が私を見付けてくれた時の曲。
私があの人と会った時に知った曲。
あの人が私に教えてくれた曲。

「Aちゃんその曲好きだよね」

歌詞さんがそう言って笑う。

「うん、好き。すっごく思い出の詰まった曲」

そらるさんが少し面白くなさそうな顔をした。

「その割には凄く切なそうに弾くよね…」
「あ、それ俺も思ってた」

まふ君がそう言って天月さんも笑った。

…きっとそれは今はもう会えないあの人を想って弾いてるからだと思うよ。

「そうかな？うーん、でも、この曲がそういう感じだからかな？」

言わない。言わないよ、そんな事。
私には今はまふ君がいるし…会いたいけど寂しくはないよ。

「そろそろ帰るぞ、見回りが来る」

そらるさんがそう言って鞄を持つ。
今日はまふ君の家に泊まる。

…言うべきなのかな、まふ君には。
でも、きっと、まふ君は説明したって私を殺してくれないでしょ？