(11)残された縁 ページ13
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そうとは知らないAは、ビクビクとしながら甚爾の腕に手を伸ばすと小さな光がそれを包み込んだ
しかし怪我ではないため、血が消えずに『あれ?あれ?』と困惑してその目には涙が溢れそうになっていく
そしてその涙が零れる直前、甚爾はAの頭に手を乗せ、膝をついて目線を合わせた
「おいチビ、これは反転術式か」
『はんてん…、うん、そんな名前だった気がする…。
お母さんから "知らない人には使っちゃダメ"って言われてるんだけど…』
『今日は治せなくてごめんなさい』とそう謝る
Aが下を向いて、先程の涙が今度こそと零れ落ちかけたが、甚爾は親指でそれを掬って頭を優しく叩く
次の瞬間、Aの前から甚爾が離れたかと思えば、その手には先程の子猫が掴まれていた
驚いて顔をあげたAに、その子猫を押し付ける
『っ吾郎さん!』
「いいものを見せてもらった礼だ」
『わ、私なにも…』
「ガキが細かいこと気にすんじゃねぇよ」
2度目の「じゃあな」と言って立ち去っていく
離れていくその背中に、Aは『待って、』と声を投げかけた
甚爾はポケットに手を突っ込みながら、少しだけ振り返る
『ありがとう!!またね、お兄さん!』
小さな背丈から声を絞り出した
その腕の中に抱えられた吾郎さんも「ニャ!」と声を上げていた
甚爾はその様子をフッと笑って、片手を上げて返事をしてその場を去ったのだった
「…アイツ、恵と同じぐらいか
縁がありゃまた会うかもな」
そう呟いた声は、誰にも拾われず風に流されて消えた
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ほやっく(プロフ) - souさん» コメント嬉しいです〜!!読んでくださりありがとうございました!!! (2022年1月23日 10時) (レス) id: f8046942e5 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様です!私も恵くん大好きなのでオチが恵くんでとっても嬉しかったです!! (2022年1月22日 21時) (レス) @page40 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほやっく | 作成日時:2021年3月3日 19時