9 過去。2 ページ9
…
母は結局、私が5歳の時に息を引き取った。
元から私を産んでからは床に着いていて、調子がいい時は少し屋敷の中を歩く程度だった。
「……すまないな、A」
葬儀中、ぽつりと父が零した。
「お前も、お前の母さんも救ってやれなくて」
きっとこの家に、私と触れられる人はもう居ない。
かつては強く階級も上であられた祖父も今や老体。
私の呪力が万が一ぶつかってしまえば、肉体にきっと限界がきてしまう。
コントロールができないそれは、文字通りただの呪いで。感覚を掴むのが遅い私と共に訓練をしてくれるような余裕は、誰にもなかった。
そうして。
小学校は、なるべく人と距離を置いて関わった。
普通の学級では人が多いから、特別学級への申請をして、なるべく人との接触を避けて過ごした。
中学校では、それを不審に思った子供たちに絡まれるようになった。
毎日追いかけられて、逃げ回っての繰り返し。
呪力は多少コントロールできるようになったと言っても、量に見合うレベルではなく。結局机2つ先程からこちらに歩いてくると弾いてしまう。
それがとてつもなく恐ろしくて、後ろ指をさされている気がして、私は中学校もいつしか行かなくなった。
『──Aちゃんは、化け物だ』
小さい頃叫ばれた声がちらつく。
胸を掻きむしりたくなる焦燥に、何度目を背けて耳を塞いで目を瞑ったか。何度、背を丸めて暗闇に消えたいと思ったか。
小鳥遊家に、呪術に長けた呪術師はいない。それは、そういう強い人間との繋がりもないわけで。
私は呪力をどうにも出来ないまま、中学三年生の年である15の夏を過ごしていた。
勉強もその日は終わって、広い部屋で蹲っていたあの日。
「はいはーい、お迎えに参りましたよ〜」
襖を作法もなしに開けた男──五条悟が、私を光のもとに連れ出してくれたのだった。
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みみず2(プロフ) - なおこちらのコメントは後日削除させていただきますので、必要であればお控えくださいますようお願いしますm(_ _)m (2022年4月26日 6時) (レス) id: c96996a763 (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 途中でも読みたいので教えてください❗ (2022年4月26日 0時) (レス) id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 大丈夫です。 (2022年4月26日 0時) (レス) id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
みみず2(プロフ) - みさにゃんさん» コメントありがとうございます。2作目の方が作品途中で更新停止してしまっていますがよろしいでしょうか? (2022年4月25日 2時) (レス) id: c96996a763 (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます❗ パスワードを教えていただきたいです。 (2022年4月24日 18時) (レス) @page48 id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みみず2 | 作成日時:2021年2月23日 21時