家族になって十七日目 ページ39
幸せだったのも束の間、私は気付いてしまった。
『...』
自然と手を握る力が強くなる。
温もりとは残酷だ。どうしてもその温かさを求めて、離したくなくなる。それと同時に顕著になる。中也さんばかりに頼っていられない、自立しなければという心とは裏腹に、私はこの手を離せないという事実が。
「どうした、辛気臭い顔しやがって」
俯き加減に不安げな顔をする私に、中也さんが問う。ほら、そういうとこ。貴方は優しすぎるから。甘えてしまうんだよ、私は。
『中也さん...わたし』
ドンッと音がして見知らぬ人とぶつかる。すみませんと早口で頭を下げて去っていくその人に、いえと一言返事をした彼がその背を見送るように視線を伸ばして、ようやく振り返る。
「わりぃ、なんの話だっけか」
『ううん。大した話じゃないよ、気にしないで』
言えなかった。まだこの立場に甘えていたいと、やはり思ってしまった。誰かに心配されながら、気遣われながら。その、私が愛と呼ぶ行為が、すごく嬉しい。
このままではいけないと焦る気持ちと、甘えていたいと余裕のある気持ちがせめぎ合う。私の中に葛藤が生まれていた。
＿＿私はこの浴衣みたいに綺麗な人間じゃないから。自分がこれまで歩んできた道が普通じゃなくて、私も、普通じゃないってわかってる。
だからね、余計に嬉しいの。馬鹿みたいに喜んじゃうの。甘やかしてくれる人がいることが、優しくしてくれる人がいることが、帰る場所があることが。
私、もう一人で立てなくなっちゃうよ。＿＿＿＿
そう、言いたかったのに。
あの日。瓦礫の中に寝転がって、ゆっくりと死を感じていた。このまま死ぬのか、短い人生だったな。結局神様は現れないのだと諦めていた。
それまではずっと自身の足で立って、地を蹴っていたはずなのに。力が入らなくなって崩れ落ちた途端に立ち方がわからなくなってしまった。それからずっと、中也さんに支えてもらって立っている。
まだまだ立てない振りをして。
本当は、もう一人で立てるよって言わなきゃいけないのに言えない。だって、支えてもらっている方が楽だから。躓いても転ばないから、向かい風が強くても後退しないから。
私はこれできっと、挫折を知らなくなった。
それでいいの？
赤提灯が、屋台からの香りが、
人々の喧騒が問いかけた。
いいわけないよ。
答えるより前に私たちは引き離された。
『あ』
波に連れ去られるまま、中也さんの顔は見えなくなった。
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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (
レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください！と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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