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家族になって十日目 ページ32

少女の何気ない呟きを獣の耳は逃さなかった。

「海?」

『うん、海。きらきらしてて、透き通ってて、奥底には海賊たちのお宝が沈んでるの。丁度このびーだまみたいに』

中島は思う。きっと彼女は、不器用なんだろうと。

これまでどんな環境で過ごしてきたのか、詳しいことは自身には分からないけれど、口角は上がらずに目だけを細めた少しだけ嬉しそうな顔に自ずとそう感じた。笑顔の不慣れな下手さとでもいうのか。

「素敵な感じ方だね、なんだか詩的で」

「もう小男の浪漫主義に侵食されてるんだ」

『この中を泳げたらきっと気持ちいい』

「いやべたべたになるだろうけどね」

「太宰さんもう黙っててもらえます?」

はーいと間の抜けた返事をした太宰が長椅子に横になったところで、此処からが本番だとでもいうように、きゅぽんと音を立てて瓶の蓋が外された。

そして目の前の名探偵を名乗る彼を真似て、ラムネを一気に煽る。

『...っぷは、美味しい』

「僕がおすすめしたんだから当たり前だろう。ようし、それじゃあ記念にそのビー玉もあげるよ。一生の宝物にするといい」

『たから、もの』

瓶の中で心地よい音色を奏でながら転がるビー玉をしばらくぼーっと見つめたあと、彼女は深くうんと頷いた。その口角はほんの少しだけ上がっていたような気がした。





*

『中也さん、これなんだと思う?』

「あ? ビー玉だろ」

『違うよ。私の宝物』

「ふうん」

『あ、中也さんたちの方が宝物度上だから安心して』

「いや妬いてねえわ。ていうかなんだ、宝物度って」


****

しばらくこんな感じでほのぼの日常話が続きます。
たまに夢主ちゃんが成長したり、学んだりします。

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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください!と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:苗代 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年3月18日 20時

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