出会って十一日目 ページ12
本部から少し歩くと大通りに出る。人の往来が多い分、右手にも左手にも有名なチェーン店や飲食店などが所狭しと並んでいた。
その真ん中で、目を輝かせる少女が一人。
『なんかすごく都会って感じ』
「まあ一応都会だからな、横浜は」
片手を外套の袋部分に突っ込んで、もう一方の手で彼女の腕を掴みずるずると引き摺っていく。最初はその新鮮な反応を微笑ましく見ていたが一々がこれでは埒が明かない。
まずは腹拵えだろうかと立ち寄ったのは、近頃人気のパンケーキ店。何時だったか此処は必ず流行るわと得意気な顔をするエリスに連れられて入店したことがある。そしてその予言どおり、今では女子高生が集う有名店となった。女の勘というものは本当に末恐ろしい。
『ぱんけーき...ホットケーキとは違うの?』
「俺にもよく分からん」
昼時、丁度店内も混む時間帯なのだろう。入店した際店員に相席でも良いかと確認され了承すると、少しして奥の席へと案内された。周りのテーブルに置かれた料理をちらちらと見ながら歩く少女に、行儀が悪いからやめろと注意すると、目の前で店員が立ち止まる。
その肩口から覗き込んで見えた顔に、思わず声が出た。
「げぇ」
「うわぁ」
それは相手も同じだったらしい。
「申し訳ございません。現在店内大変混雑しておりまして、先程お話しました相席の件なのですがよろしいでしょうか。はい、ではこちらのお席へどうぞー」
そうして通された席にはもちろん既に先客が居て、けれどそれが顔見知りだなんて誰が思うだろうか。この広い横浜で相席になる人間が知り合いで、それも敵対組織の人間であるなど、どんな確率だと問いたい。
太宰治、中島敦、泉鏡花が、その席で食事をしていた。
「ほんと最悪。寄りにもよって何故中也が来るのさ。君、こんな可愛らしい店に来るようなタイプじゃないだろう? ということは其方の彼女のためかな。とうとう敬愛する首領と同じ趣味まで持つなんて、どれだけ設定盛る気なの」
「うるっせえよクソ木乃伊野郎が。俺は別に幼女趣味じゃねえし、そもそも此奴はもうそんな歳じゃねえし、手前は黙って川の水でも啜ってろ」
ばちばちと火花を散らしながら睨み合うなか、隣ではAが居心地悪そうに身動ぎする。そしてお冷を両手で握って無心で水と見つめ合っていた。
「あ、あのー、初めまして」
愛想笑いを浮かべながらどうにか声をかけてきた人虎にも、こくりと一度頭を下げて、早々に口を噤んでしまったのだった。
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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください!と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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