第8話 ページ8
ぶちぶちと筋が切れる感覚が刀を通して伝わってくる。
これでいいのだ。
「おい、何をしている」
「…お父様私は罪人を罰せられる立場にあるのであれば、首を落とす以外の刑を申し出ます」
私は桂の手を縛る縄を斬った刀をお父様に向ける。
桂は口角を上げ、下を向いていた。
「…言ってみろ」
「一生輝内家に追われる…です!!」
「よし、A逃げるぞ!!」
桂は威勢よく叫ぶと、煙幕で当たりが真っ白になる。
手を引かれ、広い家から飛び出す。
「Aは先に逃げるんだ。ここは俺が食い止める」
「1人じゃ無理だよ、どうする…え??」
後ろを振り返ると輝内家と侍が刀を交えて戦っていた。
桂が捕まっていて、こうなることを知っていたのだろうか。
「ありがとう…桂、後で会うんだから生きててよね」
「ああ」
桂は私の足元にしゃがみこむとペンチで鎖を断ち切ってくれた。
「逃げろ…歌舞伎町へ!!」
「うん!!」
走って走って、裸足のことも忘れて、足の裏に沢山の傷を作りながら森をかけた。
輝内家は大きな森の奥にあるため、街は近くにない。
いや、街が近くにあることが不都合だからこうしてわざわざ人気のないところに住んでいるのだ。
「道、わかんないけど…取り敢えず森出れるように走ればいいよね…」
懐にしまっていた巾着袋から髪ゴムを取りだし、適当に1つ結びにまとめる。
髪を束ねるだけでこんなにも走りやすく、視界が開けるのか。
近くから川の流れる音がするので、近くに駆け寄る。
清らかな水が静かに激しく流れていた。
これに沿っていけば…いつか森を出られる。
「おい、いたぞ!!」
「逃がすな!!」
後ろから男の声が聞こえる。
軽く息が切れていたのでまた走るのは辛いが、そうは言っていられない。
川沿いに走っていると、その先の見えない所まで走ってきた。
「さあ、観念してこっちに来い」
「嫌だ…もう二度と帰らない!!」
「どちらにせよここで行き止まりだ。滝壺に飛び込んででも逃げる気か??」
「…よくわかったね。…さよなら!!」
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作者名:虹 | 作成日時:2019年8月29日 0時