・91 ページ47
.
Side…*
曇り空に覆われた国際空港では、旅行や出張に向かう人の波を掻き分けるような速さで、1人の男が歩いていく。
その額には汗が滲み、明らかに周りを警戒している様子だった。
カナダ行きの飛行機の搭乗口に男が立った瞬間、背後から肩を叩かれ、男は大袈裟な驚きの声を上げる。
男が振り返った先には、2人のスーツを着た警察官が立っていた。
「警視庁の毛利です。署までご同行願います」
SideA
曇り空の憂鬱な夕暮れ、
しん、とした取調室では毛利さんがあの解剖医の男を見据えていた。
私はマジックミラー越しに、その様子を見ていた。毛利さんが特別に通してくれたおかげだ。
俯く解剖医に、毛利さんが口火を切った。
「先日、鑑定書を偽造しUDIラボから遺体を持ち出したのは貴方ですね?
貴方は13年前、奥さんを病気で亡くしていますね。貴方は奥さんが通院していた、内科の医師を恨み、自分と同じ状況にする為その医師の妻を殺害した。
そして、殺害した妻の解剖をした貴方は容疑を全て医師になすり付ける為、証拠を隠蔽し鑑定書を書き換えた。違いますか?」
男は俯いたまま、唇を噛んだ。
何も言わない男に、毛利さんはひとつため息を吐き、1枚の資料を見せた。
「これは、13年前殺害された奥さんの傷口のホルマリン溶液から検出された、凶器の構成成分表です」
それは、私が凶器が違うと言った直後に、急いで調べたものだった。
男は目線だけを毛利さんに向けた後、目の前の資料にその視線を落とした。
「貴方が作成した鑑定書には、ステンレスを構成するクロム、ニッケルが出たと書かれていますが、実際には鉄、炭素が多く検出されました。
つまり、凶器は鋼で作られた包丁ということです。この包丁はステンレスに比べ、クロムの量が少ない。だから凶器からクロムが多く検出されるなんてありえないんです」
毛利さんは追い詰めるように、身を前に出しながら話す。机を挟んだ男は、肩を震わせていた。
「この鋼の包丁、そうとう切れ味がいいそうです。実際に使った感想はどうですか?」
毛利さんに煽るように言われ、男は汗ばんだ拳を強く机に叩きつけた。
「確かに…鑑定書を偽造し遺体を持ち出したのは私です。13年前、解剖結果を書き換えたのも私がやりました」
男は震える唇から、言葉を捻り出す。
「では、全ての犯行を認めるんですね?」
.
1221人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時