【ハイキュー】マジ、女の子は顔じゃないらしいよ。

96　一歩も踏み出せずに ページ22

▽(及川視点)





最初はただの好奇心だった。

ほら、よくあるじゃん。
不思議な子が気になって、接していくうちに惹かれていっちゃうやつとか。


俺もそうだ。

面白い子がいて、この子と付き合えたら楽しいだろうなー、この子となら幸せになれそうだなーって思って。
それは紛れもなく俺の恋で、俺が彼女に近づいた原点なのだけど。


……彼女は俺を本気では拒まない。

俺が笑うと心底嫌そうな顔をして、俺が怒ると呆れた顔して謝って、俺が泣くと面倒くさそうに慰めてくれる。
無愛想で可愛さの欠片もない彼女の優しさに、俺は何度救われて何度励まされて何度好きになれたか。


けれどそんな小さなきっかけから始まった俺の恋は、伝えきれない大きさにまでなって。
この、心地のよい関係をずっと壊せずにいる。




「Aー！好き！」

『あーハイハイせんくす』




俺の本気で冗談の告白は、もう飽きたように表情さえ変えずに流されるのは知っている。
そういうところが好きなんだけど、不安になって。

もし俺が真面目に心から本気で告白しても、そう流されてしまうのかもしれない。
流されなかったとしても、断られたら。もうこの関係も全てなくなってしまうかもしれない。







「……ねえA」





俺が本当に、


お前を好きだと言ったら、


Aは、どうする？







『そういうの本当にもういらねぇわ』

「ひど！」



そんな俺の、臆病で情けない、保険のような問いに返ってきた声は、いつもと変わらなかった。



……ああ、これじゃあずっと変わらない。




・

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