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「ねえ、A」




「……何? 先生」




 松陽に名を呼ばれて顔を上げる。松陽の視線の先には、高杉を中心に和気藹々とした雰囲気が流れており、道内は笑い声に溢れている。
 手に持ったおにぎりを食べながら、微笑みを浮かべる松陽。Aは首を傾げた。




「賑やかになりましたね」




「うん。でも、これくらいが丁度いいよ」








 夕暮れ時。燃えるような色が木々を照らしているが、空のずっと向こうは既に暗くなり始めていた。




「お前、高杉っつったか。一度勝ったくらいでつけあがんなよ。てめェが奇跡的に俺から一勝する間に、俺はお前に何勝した。俺に本当に勝ちてェなら、負け分取り戻してェなら。――明日も来い。次勝つのも俺だけどな」




 高杉に背を向けて塾に戻る銀時。ぴたりと立ち止まったその先に、肩から下げた打刀を揺らすAが立っていた。

 少しの沈黙。何も言わずAは草鞋を履いて銀時の横を通り過ぎ、静かに高杉の後姿を眺めていた。




「行こうぜ、A」




 立ち止まるAは縹色の髪を揺らして振り返る。




「ううん。少し行ってくる」




 それだけ言ってAは高杉の後を追って行ってしまった。


 Aの背中を視線で追う銀時は、ぼんやりと考え事に耽っていた。

 いつも不思議な事を行うAが、初めて――自分の知りうる限り――人に何らかの助言をしていた。松陽の話を聞く限り、Aは毎度やって来る高杉に銀時の突破法を遠回しに伝えていたというのだ。
 いつもこれから先何が起こるのかを知っているようなAは、いずれ、高杉が銀時を突破することを知っていたのだろうか。それなら、自分に教えてくれればいいのに。


 ――――なんで、あいつに……。


 Aのことをよく知っているのは、同い年の自分。
 Aのことをよく知っているのは、いつも一緒にいる自分。
 それ以外の侵入が、妙に腹立たしい。

 そんな、自己中心的な思いと子供らしい我儘と嫉妬。銀時は舌を鳴らした。




「……気に食わねえ」




 呟きは誰に届くでもなく消えた。





 

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設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時

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