松の下 ページ4
松の下
×××
「――ここが松下村塾だな」
門の前で刀を抱えていたAは顔を上げる。
そこには数日前、神社で他の塾の者達といざこざを起こしていた少年だった。
真っ直ぐAを見つめる高杉は、ゆっくりと立ち上がるAのその動きも翡翠色に映していた。
刀を抱え、高杉に背を向けるA。半身を高杉に向け、Aは徐に口を開いた。
「名前は?」
「高杉晋助。――……道場破りに来た」
風に乗って竹刀のぶつかり合う音が聞こえる。その音を半ば子守歌代わりに聞きながら船を漕いでいると、砂を踏みしめる音が道の方から近寄って来た。
眼を開き再び顔を上げると、長い髪を一つ結びにした少年がいる。
欠伸をしながら立ち上がった。その少年――桂は、Aの前で立ち止まる。
「中に入っても構わないか?」
「……名前は?」
「桂小太郎だ。先程ここに高杉晋助という男が入っただろう、あいつと同じ塾の生徒だ」
「そう。いいよ、入って」
道を開けたAに礼を言った桂は門を潜った。もう一度欠伸を洩らしたAは座り込む。門の柱に寄りかかったまま瞼を閉じた。
穏やかな風を感じながらAは高杉と桂のことを思いだす。
神社で会った時から感じていた"何か"に、今でも疑問に思っていた。時々感じるそれはまだ判明しておらず、しかしそれを解決しようとは微塵も考えていなかったのが本音だ。
――松陽と巡り合った日も、銀時と出会った日も、この"何か"を感じていた。
所謂虫の知らせ――しかしこれはAにとって逆の意味――だと松陽は言っていた。それが本当ならば、悪いことが起こる時は一体どうなるのだろう。
今考えても仕方ない。Aは膝を折り眠りについた。
この先、何度も
205人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時