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ふぅふぅと銀時の息が荒くなる。それに反比例して、高杉は口角を歪め、銀時の肩を掴んで突き飛ばした。
「ただ見てるだけのお前と、あいつの危機だっつぅときに駆けつける俺。……Aの中で、一体何がどうなるか、お前もケツの青いガキじゃあるめぇ、わかるだろ」
「Aがなんでこの戦いに参加してるか、お前だって理解してるはずだろ……」
鼻で笑った高杉が、何も語らず踵を返す。これ以上Aの眠る部屋の前で騒いでいては、折角寝かしつけたのに意味がなくなってしまう。
くそ、と吐き捨てた銀時が、高杉の背中を睨む。それから、横目でAの眠る襖を見やった。静かにそこに手を掛け、ゆっくりと、音も無く開けて隙間から中を覗き込む。ようやく晴れて顔を出した月の灯りに照らされて、彼女の横顔がぼんやりと浮かび上がった。
瞳を閉じて眠っていることがわかると、銀時は、部屋の中に足を踏み入れた。
「……お前も、こんな顔するんだったな」
それは久しく見るAの寝顔だった。
今までずっと張り詰めていたようで、隈も酷く、夜な夜な一人外を歩いていたらしい。だから、こんなに深く眠りに就いているのはあまりにも珍しかった。
Aも銀時も、あの日から眠れていない。
燃え盛る寺子屋を背中に、松陽が目の前で連れ去られていく。密かに小指を立てて言うのだ。
――――Aを、一人にしないであげてくださいね
なんて、無神経な言葉だろう。なんて重い言葉だろう。
青白い顔のAの頬をそっと撫でた。傷だらけで、血が滲んでいて。
高杉が触れたであろう彼女のくちびるのふちをなぞり、息を呑みこんだ。
この胸の痛みはなんだろうか。刀傷を受けたものよりも痛くて、苦しくて、呼吸もままならなくて、目の前の存在にどうしようもなく目が離せなくなる。
高杉に、明け渡したくない。
幼い頃から抱いていたこの感情が、醜く姿を変えて形となって現れる。
――こんな事になるなら……。
初めから、Aをこんなところに連れてこなければよかった。
「俺が、お前を護るからな」
もう二度と、Aが傷つき苦しむ姿を見たくなかった。
――二度と、だ。
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時