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「……辛くねェか」
「え?」
そう切り出した高杉にAは驚いて目を上げた。高杉はどこか遠くを見つめていた。
辛くねェか。
高杉の言葉がずしりと胸に圧し掛かる。
隊士達に軽蔑の眼で見られることは今に始まったことではない。どうして私が。そう思ったことは一度もなかったわけでもない。ただ戦っているだけなのに。ただ目的の為に剣を握って、戦場を走って、敵を斬っているだけなのに。
強く拳を握った。電撃が走ったような痛みに掌を見れば、力を込めすぎたのだろうか、爪の当たる所に傷が出来ていた。そういえば、坂本に昼間、力を抜けと叱られたのだった。
「……もう、忘れちゃったなあ。私、何が辛くなったんだろうね」
そう言って笑うと、高杉は不思議な顔をして、屋根から飛び降りた。
「A、俺とお前はあそこにいたころからの仲だ。……俺は、お前が苦しんでる姿なんざ見たくねぇ」
そう言った高杉の眼に、Aは茫然とした。
「……晋助、君……――」
それだけ言いかけて、Aは口を閉ざした。
少しの間を開け、再び、Aはゆっくりと笑みを浮かべる。
「うん。ありがとう、晋助」
高杉の頬に触れた。
彼の頬は熱を帯びたように暖かったのを、覚えている。
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時