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「どうも、Aさん」
「うん。怪我は?」
「Aさんのお陰で、無傷ですよ」
声を掛けた隊員が朗らかに笑って答えた。この間まで剣を持って戦う事に躊躇していたのに、今となっては勇ましい姿になった。坂本は嬉しい成長じゃ、と言っていた気がする。
もう何日経っただろう、最初の内は日を数えていたが、今ではそれも面倒になって満月の昇った回数しか数えなくなってしまった。
戦のあとはどうも気が荒立つ。人を斬ったせいだろう、全身の毛が逆立っているような気分だ。血の浴びた身体を流そうと森の中を流れる川へ向かっていると、不意に話し声が聞こえて来た。
「――……おい、見たか? 神薙さんのあれ……」
「ああ、見たよ。ありゃあ人間じゃねえよな、正直」
「化け物、だよな」
……私の事か。
Aは隊士の話す内容に溜息を吐いた。てっきり女だからと見くびられているのかと思えば……。
目を伏せたAは逃げるようにして立ち去った。
Aは強かった。誰よりも。――当然、それをよく思わない者もいた。それに加え、Aは戦場では”女”。誰よりも強かったはずなのに、誰よりも嫉妬の感情を向けられた。
簡単に水浴びを済ませ根城としているところへ戻ると、桂が共同スペースで腕を組んで何か悩んでいるようだった。
「……小太郎、何かあった?」
「ああ、Aか。……実は、此度の戦での負傷兵が多くてな、次の戦までの人員が圧倒的に足りないんだ」
そうだったのか。Aは桂の正面に座り、そこに置かれている地図を見降ろした。
確かに、今回の作戦は少し心苦しい場面があった。地理的には有利だったが、兵力差は愕然だったのだ。
「お前がいてくれたから少し楽ではあったが……いかんせん、こちらは数が少なかった。例えお前がいなくてもこうなることは……」
顔を伏せた桂にAはでも、と付け足した。
「まだ生きてる兵がいる。次の戦で、この少ない兵でどうやって勝ち星を得るかを考えなきゃいけないよ」
「……ああ、お前の言う通りだな」
頷いた桂に「それじゃあ次は」と切り出した途端、外から声が聞こえて来た。
それは、先程森の中で話をしていた隊士達だった。
「そろそろあの人も、戦の途中でおっ死にそうだよな」
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時