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「なんでお前がいたのに先生は連れてかれたんだよ!!?」
銀時の怒声が辺りに響く。松下村塾の生徒たちがびくりと肩を震わせた。
それを一切気に留めることなく、銀時は眼前に立つAに迫る。両肩に手を当て、大きく揺すぶる。反応すら見せないAに銀時は茫然とした。
「……あれ……、お前、その眼……――?」
「……私、先生の所に行く」
小さく答えたAは銀時から離れ、地面に刀身がむき出しになったまま刺さっている剣を引き抜き、鞘に納めた。近くにいた寺子屋の女子生徒が駆け寄る。
「駄目だよ、Aちゃん。いくら強くても、女の子なんだよ!?」
「女とか男とか、そんなの関係ない。私は、先生を助けなきゃ」
光の差さない瞳で、Aは虚空を眺めながら言う。
銀時と、その後ろにいる高杉と桂を方を見たAはそのまま、周りの生徒たちを見回した。
「私はずっと、殺しの才を教えられてきた。……だから、それを使って先生の所に行く」
突然の告白に誰もが驚きを隠せていない様子だった。なんとなく察していた銀時だったが、彼も、やはり驚いていた。
全員の反応に、当然だ、と目を伏せるA。逆に、この反応でなければおかしい。Aは襟巻に顔を埋めると、素早く剣を背中に下げた。
「――……まさかとは思うけど、誰か着いて来るわけじゃないよね?」
さっと暗くなる顔色。皆、Aから目を逸らしてしまった。
――その中で一歩前に出たのは。
「行くに決まってるだろ」
高杉と桂と――銀時だった。
「……戦争になって、誰か命を落とすかもしれないのに?」
「それでも行くさ。A一人だけで行かせたら、先生に怒られるからな」
桂がやれやれと言った様子で首を振って言う。そうだ、と頷いたのは高杉。
「馬鹿、だなあ」呟いたAはこちらを見る銀時に目を向ける。「こっちのセリフだ、馬鹿野郎」
――――君は、一人なんかじゃありませんよ
――…………ねえ、先生。先生の言ったことは、本当だったみたいです。私は、一人じゃなかったんですね。私、気付かなかったなあ。やっぱり、先生の言ったことは正しかったんだ。
今、行きます。そちらへ。
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時