野良犬 ページ1
野良犬
×××
――とある村のはずれに、人を襲う野良犬が現れるらしい。
そんな風の噂は、松陽の耳にまで届いていた。
幕人ですら畏怖し近付こうとしない場所――そこは元戦地であり、今となっては草の生い茂る更地と化していた。
夜の帳が下りる。
まるで"何か"を隠すように生い茂る
――そこには大樹が聳え立っていた。
「これは見事な紅葉ですね」
人の気配を感じながらも、松陽はそうごちる。
夜の闇の中でも見事に紅を散らす大樹は、風が松陽の頬を撫でる度に一枚、二枚と己の葉をその風に乗せた。
ざ、と砂を踏む音。松陽は微笑みを浮かべながらそちらを見る。
「野良犬にしては、随分大きいですね。――……名前はなんというのですか?」
ひそめて穏やかにそう言った松陽。その視線の先には
瞳も着物と同じ縹色で、鋭い眼光は月の光を反射し光る猫のようだった。
夜のしじまを切り裂く金属音。松陽はこのような幼子が風を切るように刀を振りかざすことを内心驚いていた。
泥の付いた顔が、緩慢な動作で松陽を見上げる。
「――お前も、私を殺すのか」
「……お前"も"? では、今まで君の命を狙った者がいる、ということですね」
松陽は軽く子供を弾き飛ばした。
崩れる様子もなく、子供は刀を構えたまま松陽を睨む。すると、松陽は抜いた刀を鞘に納める。その動きに子供は右眉を顰めた。
「別に、君を取って食ったりはしません。ただ、君はその剣の使い方を間違っている」
縹色の瞳が見開く。松陽の言葉を、子供は集中して聞き入れようとしていた。
「無闇に人を斬り殺す剣ではなく、大切な物を守るための剣を振るいなさい。もしそれが知りたいのなら……教えてあげましょう」
力を抜いた子供は、手に持った刀をゆっくりと下げる。
松陽は手を差し伸べた。
「……名前は?」
「――神薙、A」
×××
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ルアルア(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!更新が遅くお待たせしてしまうことも多いかと思いますが、これからも応援していただけると嬉しいです! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 見入っちゃいました…とても素敵なお話でした!更新応援してます! (2020年3月23日 21時) (レス) id: 26d889b496 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - 神月さん» コメントありがとうございます!ありがたいお言葉本当に感謝します...相変わらずの低浮上ですが、読者様のお言葉を励みに頑張ってまいります!! (2018年8月30日 10時) (レス) id: 61b26fbf84 (このIDを非表示/違反報告)
神月(プロフ) - 読み応えがすごくあります!次の話がとても気になります!面白いです!作者様のペースで、更新頑張ってくださいね。応援してます! (2018年8月27日 6時) (レス) id: 52a5891399 (このIDを非表示/違反報告)
ルアルア(プロフ) - ginさん» コメントありがとうございます! 更新は相変わらず遅いですが、面白いと思っていただけるような作品を目指して頑張って行きます! (2018年7月8日 9時) (レス) id: 013413cedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルアルア | 作成日時:2018年4月7日 3時