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「A〜!」
お昼休みに入って数分後、今日も仁花が営業部のフロアに顔を出す。
財布と携帯を持って仁花と共に社食を食べるためエレベーターで上へと上がる。初めて来た食堂はかなり賑わっていて沢山の人で溢れていた。メニューの前には人だかりが出来ていて近づけそうにないが今日の私たちはオムライスに決めているので見る必要はない。
人混みを掻き分けて食券を購入し、半分に切って食堂の受付に出す。
あとは番号を呼ばれるのを待つだけとなったので、席を確保しようと辺りを見渡すがどこも場所取りされていたり、既に座って食べていたりしているので中々見つけられない。
「Aちゃーん」
奥の方から自身の名前を呼ばれ、見ると手を振っている及川さんが居た。隣には国見さんも座っていて松川さんの姿はない。
お辞儀を返すと手をこちらに来るように来い来いとされた。来いという意味でいいんだよね?そう思って近づけば合っていたようだ。
「俺らのテーブル、6人掛けだから座って座って。この人混みじゃあ中々席確保できないでしょ?」
お言葉に甘えて仁花が奥に座って、わたしはその隣に腰をかけた。及川さんも国見さんも呼ばれるのをまっているようで番号札を持っている。
ふと、仁花を見るとどうしたのか、顔を真っ青にしてガタガタを震えていた。
「仁花、大丈夫?」
「シャッ……シャチ!」
大丈夫じゃないな、こりゃあ。完全にガチガチに緊張している仁花をどうしたものかと悩んでいると及川さんがニコニコと笑いながら仁花に話しかけた。
「ぶふっ……大丈夫だよマネちゃん。取って食ったりしないから」
マネちゃん?あ、そうか。地元が同じだった。
以前、国見さんと仁花の関係を聞いたのを思い出し、国見さんの先輩が及川さんと松川さんならばもちろん仁花も知り合いになるんだな、と考えを巡らす。
しかし何故仁花が緊張しているのか、そこは分からなかった。
「そういえば、松川さんは一緒じゃないんですか?」
「あー………まっつんは今日は外で接待」
接待……?一応新人だけれど松川さんの接待などの食事会などの予定も管理しているのだが、今日は接待があるなんて聞いてない。言う必要がなかっただけかもしれないけれど、それを知っていたら資料作成など、手伝える事があったかもしれないのに。頼りにされてないことなんて分かってるいるけれど、そりゃあ新人だし、出来ることは限られる。
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年5月9日 19時