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「市川さん達、公園で食べてた?」
「え、なんでわかったんですか」
「あそこの公園、上からよく見えるんだ。下見たらちょうど市川さんと谷地ちゃん見えたから」
あそこは上から見えるのか。なんだか恥ずかしいな、と思っていたら向かいのデスクからひょいと及川さんが顔を出した。
向かいのデスクが及川さんと国見さんだったことをすっかり忘れていた私は驚いてきこえるか聞こえないかの声量で「うわッ」と声が出てしまった。
松川さんが「なに?」と及川さんに問うと及川さんはにんまり笑って松川さんを指さして言う。
「とか言って、Aちゃんがもし一人で食べていたらって心配していたくせに〜」
「えっそうなんですか?」
「そうそう。まっつんてば食堂でAちゃん探してさ〜、偶然国見ちゃんが外見たらやっちゃんと一緒に食べてるAちゃん見つけて安心してたもんね」
隣に座る松川さんを見ると手で顔を軽くつかまれた。
「見ないで」って松川さんは言うけれど、隙間から見えた松川さんは私の顔を掴んでいないほうの手で口元を隠していたけれど耳は赤くて、少し見える頬はほんのり赤かった。
26歳には見えない松川さんがこの時は少し幼く見えて、及川さんが笑って「まっつん顔赤いよ〜?」とからかうと落ち着いたのか私の顔から手を離して及川さんの顔を掴んだ。
力を込めているようで及川さんが「痛い!痛い!」とその手を離そうと頑張っている。
国見さんはこのやり取りの間にコーヒーを淹れてきてくれたようで「ありがとう」とお礼を言ったら「どういたしまして」と朝同様、表情を変えずに返事が返ってきた。
「松川さん、コーヒーです」
「お、ありがとう国見」
「国見ちゃん、及川さんには?」
「あ、すみません。忘れてました」
嘘でしょ、と及川さんが言うので私が席を立って淹れに行こうとすると、腕を掴まれた。掴んだのは松川さんで「いいよ、及川は自分で行くから」と言われて椅子に再度座らされた。
及川さんが拗ねて本当に自分で淹れにいったが、別に怒っている様子もなく、むしろ上機嫌でよくわからない鼻歌を歌って戻ってきた。
不思議な人だな、と思わずガン見してしまい気づいた及川さんにウインクされたがどう返していいかわからず苦笑してしまった。
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年5月9日 19時