期待と不安の1日目 ページ1
4月、新しい生活がはじまる季節。
ゆらゆらと揺れる電車の中、これから始まる新たな生活に不安と期待。楽しみでもあるが、今日ばかりは不安という緊張で朝から気を張っていた。電車は通勤ラッシュの時間帯のため満員電車で、見渡すと今日から同じく新社会人なのであろう人がちらほらと見受けられる。
15分電車に揺られて最寄り駅で降りて徒歩で20分。
緊張から無意識に早足になり、長いはずの道のりはあっという間に会社の目の前に着いた。先日の新人研修で渡された社員証を首から下げて受付を通り過ぎてエレベーターを待つ長蛇の列に並んで流されるように乗り込めば中はぎゅうぎゅうで押し潰されそうだ。
なんとか目的の5階で降りることができ、数多くある会議室の中の一室、会議室Fとプレートが下げられた部屋に入ると既に数人集まっていた。
席は特に決まっていないようなので前から二番目の椅子に腰を掛けて左腕につけている時計で時間を確認する。時間まであと20分。
早く来ることに越したことは無いのだがこの静まり返った空間は辛い。
先日行われた研修で仲良くなった子はまだ来ていないようで心の中で早く来て、と願う。
静寂の中突如、ガラッと勢いよくドアが開いた。
入口に目を向けると肩を上下に揺らして息を整えている谷地さんが居て私に気づいた谷地さんはドアを閉めて私の後ろに腰を掛けた。身体を横にして後ろを振り返り、声をかける。
「おはよう、谷地さん」
「おはよう、市川さん。もしかして、私最後…?」
不安そうに尋ねる谷地さんに「どうだろう」と声に出す前にまたドアが開いて眠そうな顔をした黒髪の…おそらく同じ新入社員であろう男の人が立っている。
眠そうな人は部屋を見渡して、唯一空いていた私の前の席に座った。
谷地さんがあっと声を漏らし「国見君?」と私の前に座る男の人に声をかけた。
その声に反応して国見と呼ばれた人は振り返って谷地さんの顔をみると「あ」と声を漏らした。
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年5月9日 19時