ミステリートレイン8 ページ15
私の不安を後押しするかのように、きゃあ、と、遠くから悲鳴が聞こえてきた。
ぎゅっと心臓が潰れそうになる。
私は一度拳銃を取り出し、ロックされていることを目視で確認すると元に戻した。
立ち上がってみたが、拳銃がごく小さなものだからか、スカートの形状の問題か、見た感じの違和感はない。
レッグホルスターなんて初めて装着したけど、その道のプロがしっかりつけてくれたんだから、簡単に落ちたりもしないのだろう。
だからつけてくれたのは分かるけど事前に説明もなくスカートの中触られたら誰だって叫ぶよ。叫ばない?
とはいえ、説明されたら絶対に断っていたしそんなに時間的な余裕もないし、仕方ないの――かな?
はぁ。結局いつだって最終的にシュウが正しいってなっちゃうの本当にどうかしている。
でも、本当に銃を置いて行ったってことは、――やっぱり列車内が危険だってことだよね?あと、私の銃の腕を信じてくれてるって思っていい?
私は恐る恐る部屋の扉を開けた。悲鳴のせいか人が行き交っている。
その中に私はどこかで見知ったような男性の顔をふと目にした。
どこの誰だか思い出せないまま、部屋を出た。
どっちに行ったらいいんだろう……。
ふと、顔をあげたらうつむきがち、早足で歩いている――黒服の男が目についた。
……え? シュウ……?
いや、違う。つい今しがた沖矢昴だった人が、服全部着替えて赤井秀一になれるとは思えない。
でも……。どきんどきんと心臓が騒ぐ。
シュウじゃなかったら、零なの?
「あら、久しぶり。まさかあなたがここに乗っているとは思わなかったわ」
黒服の男を追いかけようとした途端、向かいから来た見知らぬ女性に呼び止められた。
「だ……」
誰? と聞く前に、「ほんっと、懐かしいわー」とごく自然に私をハグしながら、女性は私の耳元に唇を寄せた。
「オレにあわせて。おねーさん」それは、怪盗キッドの声だった。
私は女性に手をひかれるまま、お手洗いへといざなわれた。
――いや、2人でこの狭い空間に入るのは良くないよね。
「ごめん、他に場所がなくて。さっきすれ違った黒服のイケメン、アレはオレが米花百貨店で見た――お姉さんが熱く抱き着いていた男とは別人だ。変装はオレの得意技だから間違いないよ。
今日は他の仕事があってお姉さんにつきっきりではいられないから、近づかないで、ね?」
やばい。――あれ、誰も見てないと思ってたんだけど。
恥ずかしくて顔が赤くなる。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時