外出前 ページ1
A視点
酷く寒い冬の夜だったことを、十年近く経った今でもよく覚えている。
孤児である私はいつも飢えと寒さに怯えていた。
その二つだけは孤児にとってどうしても克服できないものだった。辛いものだった。だから恐れた。
そして今日はその二つが同時に襲って来た。全く酷い日だった。
冷たくて冷たくて、感覚がとうに無くなった冷えた指先を吐息で温めた。
足先も酷く冷たくて、じんじんと痛んだ。
唯一の救いは最早空腹を感じなくなっていたことだった。
目を閉じた。
このまま幾らか時間が経てば、これだけ寒くても私は眠るだろう。
そして眠れば死ぬのだろう。
そうして次の日には雪より冷えた骸になっている孤児を何度も見て来た。
おかげで死には慣れた。もう死体を見ても生きる為に殺しをしても何も思わない。
だから、この飢えと寒さから逃げられる手段として死を選ぶのは悪くない。
死んだら寒くない。寒さが過ぎて来る痛みも無い。お腹も減らない。
死は、怖くない。
そして、今の私にとって死は救いだ。
報われず報いを受ける生よりも、安らかな死を選んだ方が良いに決まっている。
おやすみ、と乾いた口から小さく呟いた。
然しそんな時私に電流走る!!
突如蘇る前世の記憶!そして同時に発覚する私は転生あるあるのクソ危険でチート系な異能持ちだった事!
これに狂喜乱舞する私は寒さも飢えも忘れて思わずガッツポーズ!思わず体を撥ね起こした!
そしてこうしてはいられないと痛んで怠い身体を引き摺りながら喜びを発散する為に走りまわる!
そして更に無駄にエネルギーを消費する大声という今の私にとっては致命傷の行為を同時進行で行う私ィ!!
端的に言っても言わなくても普通に馬鹿ですねェ!知ってる!!目撃者が居なかったのが唯一の救いだね!!
『やッッッたぜ神様ありがとう!転生!これ若しかしなくても転生だよね!?
ひゃっほいやったぜ長年の夢が叶った!これ現実だよね!?だってめっちゃ寒いし体痛いし怠いし!』
空腹も痛みも寒さも、この状況ではこれが現実だという事を証明するだけのものでしかない。
そもそもスーパーポジティブにアドレナリンが拍車をかけている今の状態の私ではそんなのあんまり気にしてない。
兎に角、この文ストの世界にこうして私は生まれた。
そして、これから原作や小説で起こる出来事に巻き込まれるのはそう遠くない未来の話である。
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紅(プロフ) - 終わっているですと!? (2月20日 0時) (レス) @page48 id: c840862e70 (このIDを非表示/違反報告)
くまさん - お願いします!!!終わらないでください!超好みの小説なんです〜! (12月10日 1時) (レス) @page48 id: 888b8ee33d (このIDを非表示/違反報告)
メープル - こういうのホンっと好きです!続きをお願いします!!!! (12月9日 14時) (レス) @page48 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - おわた? (12月2日 10時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
日向 - 終わっ…て…いる…? (9月8日 16時) (レス) @page48 id: 8f5d606c19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐教信者 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年4月20日 9時