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「どうぞ、Aさん」
「今回は千冬くんか!ありがとう」


Aをバイクに乗せる松野の後ろから、夥しい数の怨み籠った視線が刺す。その視線は全て負けた男たちのものである。


「じゃあ、行きますよ」
「お願いしまーす!」

最後に松野は、後ろへ勝ち誇ったような顔を残してバイクを走らせた。




「…千冬生意気じゃね?」
「俺も思った」
「場地〜、しっかり教育しとけよ」


___


「千冬くんの後ろ乗るの初めてかも」

と松野の後ろでそう言うA。松野は後ろに聞こえるように少し声を張り上げて返事する。

「いつでも乗せますよ、Aさんなら!」
「ほんとに?じゃあ甘えちゃお」

そう言ってAは松野の背中に頭を軽く押し付けた。松野は突然のAの行動に思わずバイクを急停車させそうになる。

「ち、千冬くん大丈夫?」
「すっ、すいません!ちょっと動揺して…」


(信号が全部赤信号ならいいのに)

松野はそんなことを思いながら、先ほどよりもスピードを少し落としてバイクを走らせた。

___


「お疲れ様でした!」
「送ってくれてありがと、千冬くん」

そんな願いも虚しく、松野はAの家まで無事送り届けた。

Aはバイクから降り、松野へ向き合ってお礼をする。


「あ、Aさん。ちょっと待って…」

そう言って松野はAの髪を手櫛で撫でる様に整える。

そっと目を瞑るAの顔を見て、松野は顔を赤く染める。


「…オッケーです。風で髪がちょっと崩れてました」
「わあ、恥ずかしい…ごめんね」
「いえ!じゃあ俺はこれで」

さよなら、と頭を下げる松野にAは手を振って家の中へと入る。



(…髪、いい匂いした)


松野はAの髪を撫でたときにふわりと香った、甘い香りを暫く忘れられなかった。

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まる(プロフ) - 律さん» ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。 (2022年4月10日 23時) (レス) id: da53087094 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - YUKIさん» よかったです…!続編もよろしくお願いします。 (2022年4月10日 23時) (レス) id: da53087094 (このIDを非表示/違反報告)
- 90話が2つあります (2022年3月24日 14時) (レス) id: 9309c00326 (このIDを非表示/違反報告)
YUKI - 見るのが初めてだったのでよかったです。 (2022年3月1日 17時) (レス) @page32 id: 4941e1735c (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 芹奈さん» 遅くなり申し訳ございません。ご指摘ありがとうございます。訂正致しましたので良ければご確認ください。 (2022年2月3日 1時) (レス) @page16 id: 7672e7a131 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まる | 作成日時:2021年9月21日 17時

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