愛の監獄 【ヤンデレ】【太宰治】

痛叫 ３５ ページ35

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扉が開いても、その先には



彼はいない





貴方は私を確認すれば安心したような微笑みを零して、また私に触れる





その度に、好きなはずの貴方が怖くて





そしてまた貴方は悲しい顔をして









こんなの、本当は



貴方も望んではいなかったんじゃないか









貴方に聞いた



『どうして





また閉じ込めるの』





貴方は



"愛しているからだ"と



言ってくれた





そんなものいらないわ





『…っふ…う…ッ』





「そんなに泣くなよ





俺は、ただ…───────」









貴方に抱かれる度に、彼に会いたくなる



彼の暖かい腕の中で愛されていたかった





あんなに大好きだった中也への想いがここまで変わってしまうとは思ってもいなかったけど



やっぱり、駄目なんだ





『も…やだ…っ』





お腹に回された貴方の腕がきつく絡まる



背中いっぱいに貴方の温もりを感じる





「愛してんだよ…





何で



わかってくれねェんだ…────────」





貴方は私の首筋に顔を埋めた





・





『Aちゃん？！どこにいるんだい？！



ねえ、怒らないから





お願い、出てきてくれ…』





やられた





中也がここへ来たのだ



人の力では到底割ることのできない硝子が粉々に砕けていた





中也が異能力で重圧をかけ、Aを連れ去った





『あ、ああ…！！





今すぐ、行かなくては…



Aちゃんを





あの家に、置いておくわけにはいかないのに…ッ！！！』





自分が自分でないみたいで



空っぽになったベッドをなぞらえるだけ





悲しさよりも焦りが勝り



今すぐにでも、Aちゃんを、助けなければ





私なら





私しかできないから





Aちゃんはもう、私を求めているから





・





Aちゃんの居場所を特定するのにそう時間はかからなかった



任務帰りで疲れきっている中也に近づき、帽子のリボンの裏へ盗聴器を付け





何も知らない中也は、そのまま家へ帰った



ヘッドフォン越しに聞こえてくる、Aちゃんのあまりにも悲痛な叫びに目を瞑りたくなる

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