15、不安(かな視点) ページ16
「花嬪は良い子ね」
「やろ?変な側室迎えんで良かったわ」
今は王様…健水と晩酌中。
私たちは一日に一度は必ず会う。
例え、どんなに忙しくても、元気がなくても。
ほんの少しでも、たった一言でも会話をする。
そうすることでお互いのことを知れるし、
すれ違いが起きないようにしてる。
そもそも王と王妃になる前から
会わない日なんて、無かったんだけど。
「でも、なんで大妃様は花嬪を推薦したんやろ?」
「んー、花嬪の家と繋がりがあるとか?」
「そんなに会ってたイメージ無いんやけどな…」
「王様だからって、
全部を知れるわけじゃないじゃない。
知らないこともあって当然でしょ」
「そうやな」
もし、私に子どもができていれば、
花嬪は側室にならなかったのだろうか?
いや、側室になっていたか…
月派の王妃が王子を授かった話は
どの書物にもなかった。
そもそも太陽か月かは占いみたいなもので決まる。
だから正しいのかどうかもわからない派閥分けで
なんの不正も無いとは、とても言いきれない。
それでも、この国が太陽か月かにこだわる理由は
何かと前例があるから。
月派で王になった方は早くに他界するし、
月派の王妃は男の子を授からない。
授かったとしても幼くして亡くなるか、
後ろ盾がなく王宮から追い出されるか…
健水のお母さんは太陽派の人で王様の子を妊娠したが
健水が生まれる前に夫である王様が亡くなって
王宮を出なければならなくなった。
※王が逝去しても王宮に残れるのは正室のみ。
側室が王宮に残ることは稀なこと。
その後、健水が生まれ、彼は太陽派だとわかった。
その頃、とりあえずで即位した月派の王様。
大妃様の夫にあたる方は、十年程で亡くなった。
国民には理由が語られていないが
王であることの責任の重さと
王妃様(今の大妃様)が流産したことが重なり
心の病にかかり、自ら人生に幕を落とした。
そこから、やはり王は太陽が良いと
まだ十代の健水が王になり、今がある。
王妃は貴族で月派なら、誰でも良かった。
どうせ、世子は生まれないから…
「かな?」
「ん?何?」
「あんまり一緒におられへんくって、ごめんな」
って優しく抱きしめてくれた。
どんなに不安でも、寂しくても、
いつも健水がそれらを消してくれる。
大丈夫。
私は独りじゃない。
でも不安が無くなるわけじゃない。
16、二人の男の子(亜弥視点)→←14、月明かり(花嬪視点)
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