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HiMERU
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ポッと出の人間がこのビルで
のうのうと働けるはずがない。
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そう、俺は彼女の“正体”を知っていた。
もちろん、彼女の華々しい経歴も。
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男性アイドル事務所の重鎮である
ジャニーズ事務所で成り上がり、
出向を経て、コズプロに入社。
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業界でも彼女はそれなりに
名の知れた存在だった。
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そんな天性的な才能を持つ彼女が今
こんなにも近くにいる。
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これを利用しない手はない。
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俺は一刻も早く、あの
“おちゃらか集団”を抜け
本来の姿であるソロアイドル・HiMERUを
取り戻してみせる。
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…と言っても、まぁ
そう簡単に話がつくとも思ってはいない。
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相手は元ジャニーズの敏腕。
交渉術にも長けていた。
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「あいにくだけど、」
「私が今やらなくちゃいけないのは、」
「Crazy:Bのプロデュースなの」
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「だから、HiMERUくんのソロ活動にまでは、」
「私なんかじゃ手が回らないと思うんだ」
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ついさっきの俺と同じように。
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にこやかに。
差し障りなく。
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謙遜も入れつつ
しかし、これは完全な断り。
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「とりあえず、午後のレッスンよろしくね」
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そう言うと彼女は席を立ち
俺だけがレスティングルームに残される。
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Hi「…早々に“この画像”を使う時が来るかも知れませんね」
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俺はスマホを取り出し、
カメラロールを開きながら
珍しくひとりごとを呟いた。
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作者名：じまさき | 作成日時：2020年10月18日 16時
