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 ヒソカさんが動いた。いや、正確に言えば「ヒソカさんを狙う人たちが動いた」。そして巻き込まれたであろうクラピカさんとレオリオさんを助けにゴンくんも動く。結果、私とキルアくんが並走する形になった。私は飛んでいるけど。

 そして案の定、キルアくんは呆れた息を一つ吐いてから私に視線を向けた。わずかに尖った冷たい視線。なにかを探るような、警戒心のある視線。

「アンタのそれ、なに?」

 声まで警戒心に染まっていた。明るさなど微塵もない。しかし、静かで冷静な声色と真逆をいくようなトーンで私は返事をする。

「魔法だよ?」
「だからそれがなんだって言ってんだよ!」

 少しだけ少年らしさの戻った声が返ってきた。けれどやはり警戒心は薄れていない。鋭い眼光が隠し事はさせないと訴えている。多分いま私が嘘をつこうものなら、きっとバレてしまうだろう。彼の実力はわからないが、それを確信させるだけのなにかを感じた。

 まあ、嘘をつく気は毛頭ないのだが。

「だから魔法。最初に私言いましたよね? 『うっかりここに来たみたいだ』って」
「ああ」
「私、瞬間移動魔法の授業で失敗して別の世界からここに来ちゃったみたい。うっかりでしょ?」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待て!」

 キルアくんは目の前で手をわちゃわちゃとさせて私を制した。まあ当たり前だろう。突然こんなことをつらつらと並べられて簡単に飲み込めるわけがない。もっと言えば引かないわけがない。現にキルアくんは「え、コイツってこんな不思議系のぶっ飛んだヤツだったの?」と顔に書きながら、一歩私から離れた。なんか悔しかったから一歩分近づいてみた。また離れられた。

 えーと、とキルアくんが恐る恐る口を開く。

「本当に、魔法使い……なのか?」
「だからそう言ってるでしょう」
「でも魔法使いなんて、本の中の話だろ? 現実にいるわけがない」
「私はキルアくんたちの『現実』じゃない、別の『現実』から来たの。私の『現実』では魔法使いも魔法もある。それだけだよ」
「……証拠は?」
「タネも仕掛けもないコレ」

 腰をかけている元枝の丸太をポンポンと叩いて見せた。これが宙に浮いて、動いている。これがほうきだったならもうちょっと様になっていたのかもしれないが、仕方のないものは仕方ない。

 こちらをじっと睨んで丸太を観察するキルアくんの青い目。時々こちらを向いて、私の表情を伺っているのがわかった。

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作者名: | 作成日時:2019年8月22日 21時

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