Do not leave 太宰side ページ28
胸がはち切れそうな程走って、走って、辿り着いたのは墓地。一度息を整えようと深呼吸をしながら目線を彷徨わせる。
太「……っ…あ…」
大木の下に人影。間違いない。あの人だ。息を殺すように一歩ずつ近づいていく。その度に高鳴る鼓動の速度が増していくのと同時に、足の速度も増えていく。
太「(くそ、心臓うるさ……)」
向こうも近づいているのが分からない筈はないが、幸か不幸か振り向く気配はない。段々と、しかし確実に近くなっていく距離、0cm。
太「…おかえり、兄さん」
少し声が上ずってしまったかもしれない。あの太宰が緊張しているなんて言ったら、知り合い全員素っ頓狂な顔をするだろう。2年のブランクなんて感じさせない程、途切れる事なく会話が続く。この空間の居心地の良さに、途轍もない幸福感に心が満たされていく。我ながらメンヘラ道真っしぐらな言葉を言った後、ふと思った。
太「そういえば兄さん、こんなに小さかったっけ?」
『お?喧嘩売ってんだなこれは』
無言で肘打ちが来たので、逃れるために名残惜しくもAから離れる。振り返った兄さんは、相変わらず世離れした美しい端整な顔をしていた。思わず触れれば壊れそうな程白い肌の眉間に、少し皺が入っているのも美しいくらいに。
『単純にお前の背が伸びたんだろ』
太「そっかぁ…大体10cmくらいかな。2年で真逆こんなに伸びるとはねぇ」
目線の下にAがいるのが新鮮なのか、まじまじと見つめる太宰。つい2年前は同じ目線だった金色の瞳が、今では長い睫毛からチラリと覗かせている。
『仕事中だろ?悪いな、』
太「いーの、社長の許可貰ってるし。それに私が真面目に働くと思う?」
『思わん』
キッパリ即答に少し傷付きながらも、右手を差し出す太宰。
太「それではレディ、私と一緒にこれからデェトに行きませんか?」
『!…赤レンガ倉庫にあるクレープが食べたいわ、ダーリン』
太「レディの仰せのままに」
プッと2人で吹き出した後、太宰の右手に逆の手を置くA。2人を祝福するかのように、ふわり、と風が2人を包み込むように海へと流れていった。
Isolated not(離さない)
Do not leave(離さないで)
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なに - 読みやすくて3作品夢中に読んじゃいました!すごく続きが読みたいです!一年前の作品ですがよければかいていただきたい!!! (1月1日 23時) (レス) @page34 id: 609d62ddb9 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ぇ…終わっちゃったんですか・・・?続きかければ書いてください!絶対読みます‼ (2022年7月11日 22時) (レス) @page35 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 無理はなさらずがんばってください!! (2022年3月7日 22時) (レス) @page35 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 頑張って下さい!!更新待ってます (2022年1月22日 13時) (レス) @page35 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
あの - 更新頑張って下さい!応援してます! (2022年1月7日 19時) (レス) @page35 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっぽ | 作成日時:2018年1月8日 23時